
酸棗仁湯は、不眠の代表的な漢方薬です。
ツムラ103酸棗仁湯の添付文書には、心身がつかれ弱って眠れないという効能効果が記載されています。
漢方薬の効能効果には、ある特徴があります。
それは、症状を引き起こしている東洋医学的な病態と病態を改善する漢方薬が一致した場合には、即効的に効果が現れることがありますが、病態と漢方薬が一致しない場合は、一つも症状が改善しないばかりか、副作用が出てしまうこともあることです。
本記事では、酸棗仁湯がどのような漢方薬か知りたい方に向けて
・酸棗仁湯で改善できる東洋医学的な病態と即効性が期待できるケース
・酸棗仁湯の効果的な服用方法について
ついて紹介していきます。
自分に合った漢方薬を選ぶことは、とても難しいことです。
ただ、自分に合った漢方薬と出会った場合、中々治らなかった辛い症状が、嘘みたいに治ることがあります。
自分に合う漢方薬に出会い、辛い症状を改善されることを心から願っております。
目次
1.酸棗仁湯で改善できる東洋医学的な病態について
1)酸棗仁湯の記載のある条文から
酸棗仁湯が東洋医学的にどのような働きをする漢方薬なのかを説明するために、酸棗仁湯について記載のある漢方の古典「金匱要略」血痺虚労編の酸棗仁湯の条文を記載します。
なぜ条文をご紹介するかというと、漢方の古典には、「~のような時には、この漢方薬が効きます。」と記載されているからです。
「金匱要略」血痺虚労編17条
虚労煩眠るを得ざるは酸棗仁湯を主る
虚労(寝ても取れない疲れ)からきて痛いところがなく、何となく気が落ち着かなくて眠れないものは酸棗仁湯が主治します。
疲れが溜まっていて本来ならすぐに眠れそうなものの、何となく気分が落ち着かなくて眠れなかったり、何か気にかかって眠れなかったりするような時に酸棗仁湯が主治すると記載されています。
2)酸棗仁湯に配合されている生薬から
酸棗仁湯が東洋医学的にどのような病態を改善する漢方薬なのかを配合されている生薬から説明していきます。
酸棗仁湯
酸棗仁 (酸・平)10.0g
甘草 (甘・平) 1.0
知母 (苦・寒) 3.0
茯苓 (甘・平) 5.0
川芎 (辛・温) 3.0
酸棗仁は、酸っぱい生薬なので収斂の働きがあり、心の熱をとる働きがあります。知母は冷やす生薬で、内熱をとります。茯苓は、潤いをつけて、余分な水をおしっこで排泄させる働きがあります。川芎は、気の巡りをよくして、のぼせを下げて眠りやすくします。甘草は、緊張を緩める働きがあります。以上より、心熱をとって潤いをつけて、気を巡らせて気を下げることで、眠れるようになる漢方薬です。そして、心に熱が生まれてしまった原因は、疲れです。
3)即効性が期待できるケース
1)で記載させていただいた、疲れが溜まっていて本来ならすぐに眠れそうなものの、何となく気分が落ち着かなくて眠れなかったり、何か気にかかって眠れなかったりするような時は、東洋医学的には、心に熱がこもった状態です。
酸棗仁湯は、5つの生薬を組み合わせることで心の熱を改善していきます。
酸棗仁湯が即効的に効くかどうかは、飲まれる方の心の熱の状態によります。
症状が出始めたばかりなら、心の熱がそれほどひどくないと推測されますので、即効性も期待できます。
ただ、症状がずっと続いているような状態ですと、心の熱をとるのに時間がかかると推測されます。
原因は、疲れですので、体に負担をかけないような生活を取り入れていただくと、改善が早くなると考えられます。
2.酸棗仁湯の効果的な服用方法について
酸棗仁湯は、疲れが原因で、東洋医学的に心に熱が持っている不眠の方にあう漢方薬です。
一般的な睡眠薬のように寝る前に飲むと眠れるようなお薬ではありません。
心の熱をとるには、経時的に服用することが効果的だと考えられます。
なので、添付文書通り1日3回毎食前または食間に服用していくのが良いと考えられます。
ただ、心の熱の状態がかなり改善していれば、寝る前に服用することで心の熱がとれて、眠れるということもあると思います。
これは、お体の状態によって判断していかないといけないと思います。
まとめ
酸棗仁湯は、不眠の代表的な漢方薬です。
ツムラ103酸棗仁湯の添付文書には、心身がつかれ弱って眠れないという効能効果が記載されています。
金匱要略には、疲れが溜まっていて本来ならすぐに眠れそうなものの、何となく気分が落ち着かなくて眠れなかったり、何か気にかかって眠れなかったりするような時に酸棗仁湯が主治すると記載されています。
酸棗仁湯は、5つの生薬を組み合わせることで心の熱を改善していきます。
即効的な効果が期待できるのは、不眠になった原因が疲労であり、心の熱があまりひどくないケースです。不眠になってまだ日が浅い時などのケースに、即効的な効果が現れる可能性が高いです。


