自律神経失調症にお悩みで半夏厚朴湯が良いと聞いたあなた。医師より半夏厚朴湯を処方されて、半夏厚朴湯がどんな漢方薬か知りたくなったあなた。
半夏厚朴湯は、漢方の古典「金匱要略：婦人雑病編」に記載のある非常に歴史のある漢方処方です。実際、多くの自律神経失調症の方々が、半夏厚朴湯を服用して自律神経失調症を克服されています。
ただ、半夏厚朴湯は、自律神経失調症に万能な漢方薬ではありません。漢方薬の効能効果には、ある特徴があります。 それは、症状を引き起こしている東洋医学的な病態と病態を改善する漢方薬が一致した場合には、症状は改善していきますが、病態と漢方薬が一致しない場合は、一つも症状が改善しないばかりか、副作用が出てしまうこともあります。
血液検査があるわけではないので、病態を読み取るのは、問診や脈診や舌診などを駆使して行うため難しく、漢方薬を選ぶには、豊富な知識と経験が必要となってきます。
今回、自律神経失調症に半夏厚朴湯を服用するあなたに向けて、
- 自律神経失調症とは？
- 半夏厚朴湯はどのような漢方薬なのか？
- 半夏厚朴湯の合う方がほぼ共通で自覚している5つの自覚症状
についてご紹介していきます。辛い自律神経失調症が自分に合った漢方薬にて改善されるのを願っております。
目次
自律神経失調症
自律神経失調症は、長期間自律神経のバランスが乱れた状態により引き起こされると考えられています。代表的な自覚症状としては、
- 急な動機が起こる
- めまいや立ち眩みが起こる
- 吐き気や頭痛がする
- やる気が出ない
- 集中力が散漫になる
- 何もない時でも不安感や恐怖感を感じる
- 情緒不安定がある
- 被害妄想がある
- うつ症状がある
など、肉体的な症状もあれば、精神的な症状まで幅広くあります。
また、日本心身医学会は、
種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的な病変が認められず、かつ顕著な精神障害ではないもの
と暫定的に定義しており、臨床検査では何も異常が見つからない状態と言えます。
多くの場合は、自律神経のうち交感神経系が優位な状態が続いた結果起きます。
半夏厚朴湯はどのような漢方薬なの？
半夏厚朴湯がどのような漢方薬かをご紹介するために、ツムラ16 半夏厚朴湯（医療用）の添付文書の効能効果をご紹介ます。
ツムラ16 半夏厚朴湯（医療用）の添付文書の効能効果
気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸証：不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、神経性食道狭窄症、不眠症
確かに、先に述べた自律神経失調症の自覚症状のいくつかが効能に記載されていることが分かります。これから自律神経失調症に半夏厚朴湯が効く可能性の高いことが分かっていただけると思います。
半夏厚朴湯が東洋医学的にどのような病態を改善するのか？
次に半夏厚朴湯があうタイプを知るために半夏厚朴湯が東洋医学的にどのような病態を改善するかをご紹介します。
はじめに、金匱要略に記載のある半夏厚朴湯の条文をご紹介させていただきます。なぜ、金匱要略の条文をご紹介するかというと漢方の古典には、「～のような時には、この漢方薬が効きます。」と記載されているからです。
金匱要略にある記載にある半夏厚朴湯の条文
女人の咽の奥の方かあるいは食道の上の方にあぶった小さな肉切れがくっついている様な気のする者は半夏厚朴湯がこれを主るということ。
【金匱要略 婦人雑病編 5条】
咽の奥の方かあるいは食道の上の方にあぶった小さな肉切れがくっついているような気がするという自覚症状が半夏厚朴湯の合う方にはあることが分かります。
半夏厚朴湯を構成する生薬
続いて半夏厚朴湯を構成する生薬から半夏厚朴湯が東洋医学的にどのような病態を改善する漢方薬なのかを紹介します。漢方薬を構成する生薬をみると改善したい東洋医学的な病態を把握できるからです。
半夏厚朴湯
- 半夏 （辛・平）6.0
- 厚朴 （苦・温）3.0
- 茯苓 （甘・平）5.0
- 蘇葉 （辛・温）2.0
- 生姜 （辛・温）1.0
半夏厚朴湯は、温める（温）生薬が3つ、温めも冷やしもしない生薬（平）が2つで構成されています。
このことから、半夏厚朴湯は、温める働きが強いことが分かります。
半夏厚朴湯の合うタイプは、全体的に冷えの傾向があります。
半夏は、体内の気を補って水をさばく働きがあり、水の停滞によっておこる嘔吐、お腹のゴロゴロ、咳や咽痛を治します。茯苓も水をさばきます。厚朴は、皮膚、特に胸から腹にかけて温めて気の通りをよくして、蘇葉と生姜によって胃腸を温めて気の発散をよくします。特に気と水のつまりがのどの付近を中心としてあるものを改善する働きがあります。
半夏厚朴湯の合う方がほぼ共通で自覚している５つの症状
2. より自律神経失調症で半夏厚朴湯の合う方が共通して自覚している5つの症状をピックアップしました。
- 咽頭に何か詰まった感じがする
- 咳をしようとするが痰は出ない
- 神経質で何か悩み事がある
- 動悸や息苦しさがある
- 便秘はない
5つの症状をお持ちの自律神経失調症の方であれば、半夏厚朴湯が効く可能性が高いです。
まとめ
半夏厚朴湯は、漢方の古典「金匱要略：婦人雑病編」に記載のある非常に歴史のある漢方処方です。実際、多くの自律神経失調症の方々が、半夏厚朴湯を服用して自律神経失調症を克服されています。
日本心身医学会では、「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的な病変が認められず、かつ顕著な精神障害ではないもの」を自律神経失調症と定義しています。検査数値では判断できず、多くの場合は、ストレスなどで交感神経の優位の状態が続いたときに発症します。
半夏厚朴湯は、
- 咽頭に何か詰まった感じがする
- 咳をしようとするが痰は出ない
- 神経質で何か悩み事がある
- 動悸や息苦しさがある
- 便秘はない
の5つの自覚症状があれば、半夏厚朴湯が合う可能性が高いです。
