
当帰飲子は、漢方の古典「済生方」に記載のある歴史ある漢方処方です。
ツムラ86当帰飲子の添付文書(医療従事者向けの説明文書)によると、当帰飲子には、かゆみと慢性湿疹の効能効果が記載されています。
ただ、漢方薬の効能効果には、ある特徴があります。
それは、症状を引き起こしている東洋医学的な病態と病態を改善する漢方薬が一致した場合には、症状が改善していきますが、病態と漢方薬が一致しない場合は、症状が改善しないばかりか、副作用が出てしまうこともあるからです。
本記事では、当帰飲子について詳しく知りたい方に向けて
・ツムラ86当帰飲子の代表的な2つの効果
・当帰飲子は東洋医学的にどのような働きをする漢方薬なのか
についてまとめました。
適切な漢方薬でつらい症状が改善されることを願っております。
1.ツムラ86当帰飲子の代表的な2つの効果
冷え症のものの次の諸症:慢性湿疹(分泌物の少ないもの)、かゆみ
2.当帰飲子は東洋医学的にどのような働きをする漢方薬なのか?
当帰飲子が東洋医学的にどのような働きをする漢方薬なのかを説明するために、当帰飲子について記載のある漢方の古典「済生方」の当帰飲子の条文を記載します。
(1)当帰飲子について記載のある「済生方」の条文
血流が悪くなると内熱が発生し、その内熱が皮膚に出てきくると瘡疥が発生する。
また、浮腫やかゆみが発生したり、膿汁が出たり発赤したりする。これを当帰飲子が治す。と記載されています。
東洋医学では、血流が悪くなると熱がこもって血に熱を持つと考えます。
その熱が、皮膚に及ぶと、瘡疥(できものや皮膚が粉ふく)ようになったり、膿んで浸出液がでたり、発赤(湿疹)ができたりする。
それを当帰飲子が治してくれるという内容です。
ここから当帰飲子は、血流が悪くなるのを改善して、血の熱を冷ましてくれることが分かります。
(2)当帰飲子を構成する10種類の生薬から推測すると
次に当帰飲子に配合されている生薬から、当帰飲子がどのような働きをする漢方薬かについて説明しています。
当帰飲子は、
当帰「とうき(甘・温)」
地黄「じおう(甘・寒)」
蒺蔾子「しつりし(辛・微温)
芍薬「しゃくやく(苦・平)」
川芎「せんきゅう(辛・温)」
防風「ぼうふう(甘・温)」
何首烏「かしゅう(甘・温)
黄耆「おうぎ(甘・微温)」
荊芥「けいがい(苦・微温)」
甘草「かんぞう(甘・平)」
10種類の生薬からできています。
このうち、当帰・川芎・地黄・芍薬の4つの生薬は、四物湯という漢方薬を構成する生薬で、四物湯は、血流を改善し、血に潤いをつけて、熱を冷ましてくれます。
蒺蔾子(しつりし)は、辛みのある生薬で、同じ辛味のある川芎(せんきゅう)と同じ血流をよくするはたらきがあります。
何首烏(かしゅう)は、甘い生薬で、同じ甘い当帰と同じ血を補う働きをしてくれます。
防風(ぼうふう)も甘い生薬で、潤いをつけて熱を去ります。
黄耆(おうぎ)も甘い生薬で、皮膚の表面の冷えをとって血流をよくして皮膚の修復を促します。
荊芥(けいがい)は苦みのある生薬で、熱を発散させて、ただれを修復します。
甘草は、気を増します。
10種類の生薬の働きを考えても、血に潤いを付けて、血流をよくする働きを高め、皮膚の修復を助けるような働きがあることが分かります。
まとめ
当帰飲子は、血流が悪くなるのを改善して、血の熱を冷まして、熱が皮膚に影響を及ぼしているものを改善する漢方薬です。自分にあう漢方薬で、つらい症状が改善することを願っております。


