
麦門冬湯の副作用について知りたいあなた。
実は、漢方医学では、副作用という概念がありません。代わりに「誤治」という概念があります。
漢方医学では、証を見立てて、それに合わせた漢方薬を選択します。
漢方薬を服用して、症状が悪化したり、副作用的な症状が現れたりしたら、証の見立て違いの可能性が高いです。
この証の見立て違いが誤治です。
体に合った漢方薬を選ぶことは、経験や知識がないととても難しく、誤治することはあります。
その場合は、その漢方薬の服用を中止し、漢方薬を選んでもらった医師や薬剤師にそのことを伝えて、別の漢方薬を選んでもらうのが正しい対処法となります。
ただ、漢方薬は長く飲まないと効果がでないと思われ、あまり効果を実感していないにもかかわらず長期間服用していたり、漢方薬が効いて症状が完全にとれたにもかかわらず長期間続けていたり、効果がないからと量をたくさん服用していたりすると、本来の漢方薬の正しい服用方法ではないので、思わぬ症状が現れることがあります。
その思わぬ症状として、ツムラ29麦門冬湯エキス顆粒の添付文書には、間質性肺炎、偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害、黄疸、過敏症(発疹、蕁麻疹等)があげられています。
今回、添付文書に記載のある副作用を中心に麦門冬湯を服用した際に起こるかもしれない症状とその時の対処法についてまとめました。
1.麦門冬湯の副作用
麦門冬湯は、
麦門冬(甘・平)70.0
半夏 (辛・平)10.0
人参 (甘・微寒)2.0
甘草 (甘・平)2.0
粳米 (甘・平)4.2
大棗 (甘・平)4.0
6種類の生薬で構成されています。甘い生薬が5つ、辛い生薬が1つです。甘い生薬は、胃を働かせ、津液を多くします。津液とは体を潤す水分のことです。甘い生薬が5つ配合されているところに着目するだけで、麦門冬湯は、体を潤わす働きが強いことがわかります。
甘草、粳米、大棗で胃を元気にして、人参は、微寒なので、胃の潤い不足による熱をとって体液のめぐりをよくします。配合量をみると、麦門冬が70.0となっていて、極端に多いことが分かります。麦門冬は、胃に入った後に、肺へ通じるので、肺を潤わせて熱をとり、咳を鎮める働きがあります。半夏は、辛みの生薬なので、胃で生まれた津液を巡らせる働きがあります。これにより、咳を鎮めます。
よって、麦門冬湯は、肺の潤い(津液)不足で熱が生まれ、咳がでているタイプに合うことが分かります。
麦門冬湯の病態にあった時に服用すると効果を発揮しますが、別の場合に服用すると、効果が出なかったり、誤治により思わぬ副作用的な症状が現れたりすることがあります。次の(1)~(5)が報告されています。
(1) 間質性肺炎
間質性肺炎とは、酸素を取り込む働きをする肺胞と肺胞の間にある間質に炎症が起こり、酸素が取り込めなくなります。
酸素が取り込めなくなるので、息切れや呼吸が苦しくなったり、咳が長引いたりします。
麦門冬湯を続けていて、最近息切れするなとか息苦しくなっているなと感じたら、すぐに服用を中止して、受診するようにしてください。
(2) 偽アルドステロン症
血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が増加していないにも関わらず血圧が高くなります。
「つっぱり感」「手足のだるさ」、「しびれ」、「こわばり」がみられ、だんだんきつくなります。
このような症状がでたら、服用を中止して、受診するようにしてください。
(3)ミオパチー
筋肉の異常です。脱力感、筋力低下、筋肉痛、四肢痙攣、麻痺などの症状が現れたら、服用を中止して、受診するようにしてください。
(4)肝機能障害・黄疸
肝臓の機能が低下した状態です。だるくなったり、黄疸がでたりします。その場合は、服用を中止手、受診するようにしてください。血液検査で診断できます。
(5)過敏症(発疹、蕁麻疹等)
過敏症で発赤や蕁麻疹が出ることがあります。
すぐに病院を受診しないといけないような症状を引き起こすこともありますので、注意が必要です。過敏症は、長期間の服用というよりは、すぐに起きる事があります。
まとめ
麦門冬湯は、肺の潤い(津液)不足で熱が生まれ、咳がでているタイプに合うことが分かります。肺の熱にも潤い不足による熱(虚熱)と病邪が肺を襲ってでている熱(実熱)があります。この麦門冬湯の病態にあった時に服用すると効果を発揮しますが、別の場合に服用すると、効果が出なかったり、誤治により思わぬ副作用的な症状が現れたりすることがあります。
その場合は、間質性肺炎、偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害、黄疸、過敏症(発疹、蕁麻疹等)が起こる可能性があります。


