
麦門冬湯について詳しく知りたいあなた。
麦門冬湯は、漢方の古典「金匱要略:肺痿・肺癰・欬嗽上気病編」に記載のある非常に歴史のある漢方処方です。
ツムラ29麦門冬湯の添付文書(医療従事者向けの説明文書)によると、痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそくの3つの効能効果が記載されています。
ただ、ただ、漢方薬の効能効果には、ある特徴があります。
それは、症状を引き起こしている東洋医学的な病態と病態を改善する漢方薬が一致した場合には、症状が改善していきますが、病態と漢方薬が一致しない場合は、症状が改善しないばかりか、副作用が出てしまうこともあることです。
本記事では、麦門冬湯がどのような漢方薬か知りたい方に向けて
・ツムラ29麦門冬湯の3つの効果
・麦門冬湯が改善できる東洋医学的な病態
について紹介していきます。
1.麦門冬湯の代表的な3つの効果について
(1)添付文書に記載のあるツムラ29麦門冬湯の効能・効果
ツムラ29麦門冬湯の添付文書には、以下のように記載されています。
痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく
麦門冬湯で特に注意なのが、西洋医学で気管支炎や気管支喘息と診断されている方にすべて合うわけではありません。逆にひどくなってしまうことがあります。そこで、次に麦門冬湯が改善できる東洋医学的な病態について説明していきます。
2.麦門冬湯が改善できる東洋医学的な病態
漢方の古典「金匱要略:肺痿・肺癰・欬嗽上気病編」に麦門冬湯についての記載のある条文、麦門冬湯を構成する生薬から麦門冬湯が改善できる病態を説明していきます。
1)金匱要略の記載のある温経湯に関する条文
「気が大いに上逆して、咽喉に違和感があり、逆を止めて、気を下すのは、麦門冬湯が主治します。」とあります。さらにわかりやすくすると、発作的に咳がこみあげて顔が赤くなり、咽喉の通りが悪く、息も苦しく、こみ上げるのを止めて気を引き下げたいものに麦門冬湯を用います。
咽喉の通りが悪く、息も苦しく、こみ上げるような咳に麦門冬湯があいます。麦門冬湯は1日3回、寝る前に1回服用すると記載されています。このことから、夜に咳がひどくなる方は、麦門冬湯が合う可能性があります。
さらに麦門冬湯の病態を探るために、配合されている生薬を確認していきます。
2)麦門冬湯を構成する生薬
麦門冬湯は、
麦門冬「ばくもんどう(甘・平)」70.0
半夏「はんげ(辛・平)」10.0
人参「にんじん(甘・微寒)」2.0
甘草「かんぞう(甘・平)」2.0
粳米「こうべい(甘・平)」4.2
大棗「たいそう(甘・平)」4.0
6個の生薬で構成されています。甘い生薬が5つ、辛い生薬が1つです。
甘い生薬は、胃を働かせ、津液を多くします。
津液とは体を潤す水分のことです。
甘い生薬が5つ配合されているところに着目するだけで、麦門冬湯は、体を潤わす働きが強いことがわかります。
甘草、粳米、大棗で胃を元気にして、人参は、微寒なので、胃の潤い不足による熱をとって体液のめぐりをよくします。
配合量をみると、麦門冬が70.0となっていて、極端に多いことが分かります。
麦門冬は、胃に入った後に、肺へ通じるので、肺を潤わせて熱をとり、咳を鎮める働きがあります。
半夏は、辛みの生薬なので、胃で生まれた津液を巡らせる働きがあります。
これにより、咳を鎮めます。
よって、麦門冬湯は、肺の潤い(津液)不足で熱が生まれ、咳がでているタイプに合うことが分かります。
肺の熱にも潤い不足による熱(虚熱)と病邪が肺を襲ってでている熱(実熱)があります。実熱の場合は、麦門冬湯では効きません。
まとめ
麦門冬湯は、痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそくに効果があります。
ただし、肺に潤いがないためにおこる痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそくなので注意が必要です。
咽喉が乾燥しているために咳が出ているのを治します。


