
芍薬甘草湯の副作用について知りたいあなた。
実は、漢方医学では、副作用という概念がありません。代わりに「誤治」という概念があります。
漢方医学では、証を見立てて、それに合わせた漢方薬を選択します。
漢方薬を服用して、症状が悪化したり、副作用的な症状が現れたりしたら、証の見立て違いの可能性が高いです。
この証の見立て違いが誤治です。
体に合った漢方薬を選ぶことは、経験や知識がないととても難しく、誤治することはあります。
その場合は、その漢方薬の服用を中止し、漢方薬を選んでもらった医師や薬剤師にそのことを伝えて、別の漢方薬を選んでもらうのが正しい対処法となります。
ただ、漢方薬は長く飲まないと効果がでないと思われ、あまり効果を実感していないにもかかわらず長期間服用していたり、漢方薬が効いて症状が完全にとれたにもかかわらず長期間続けていたり、効果がないからと量をたくさん服用していたりすると、本来の漢方薬の正しい服用方法ではないので、思わぬ症状が現れることがあります。
その思わぬ症状として、ツムラ68芍薬甘草湯エキス顆粒の添付文書には、間質性肺炎、偽アルドステロン症、うっ血性心不全、心室細動、心室頻拍、ミオパチー、肝機能障害があげられています。
今回、添付文書に記載のある副作用を中心に芍薬甘草湯を服用した際に起こるかもしれない症状とその時の対処法、そのような症状が出ないための芍薬甘草湯の効果的な服用方法についてまとめました。
1.芍薬甘草湯の副作用
芍薬甘草湯は、芍薬と甘草の2種類の生薬で構成されています。
配合生薬が少ない漢方薬は、緊急的な用途に用いる場合が多く、シャープに効きます。
芍薬甘草湯は、筋肉のひきつりを改善することに特化した漢方薬です。
よって、こむら返りや足の攣りの他、腹痛や生理痛などに用いられます。
筋肉の引きつりという緊急事態を改善するお薬なので、その場面だけに用いれば、副作用はまず起こりません。
ただ、頻繁に筋肉の引きつりが起こるので、予防のため等で長期間服用したりすると、思わぬ症状を引き起こすことがあるので注意が必要です。
以下は、それらのケースで多い症状についてまとめました。
(1)間質性肺炎
間質性肺炎とは、酸素を取り込む働きをする肺胞と肺胞の間にある間質に炎症が起こり、酸素が取り込めなくなります。
酸素が取り込めなくなるので、息切れや呼吸が苦しくなったり、咳が長引いたりします。
芍薬甘草湯を続けていて、最近息切れするなとか息苦しくなっているなと感じたら、すぐに服用を中止して、受診するようにしてください。
(2)偽アルドステロン症
血圧を上昇させるホルモン(アルドステロン)が増加していないにも関わらず血圧が高くなります。
「つっぱり感」「手足のだるさ」、「しびれ」、「こわばり」がみられ、だんだんきつくなります。
このような症状がでたら、服用を中止して、受診するようにしてください。
(3)うっ血性心不全、心室細動、心室頻拍
うっ血性心不全とは、血液が全身に上手に運べなくなった状態です。
心室細動や心室頻拍は、心収縮がうまくいかない状態です。動悸や息切れ、倦怠感、めまいや失神が起きたら、すぐに緊急受診してください。
(4)ミオパチー
筋肉の異常です。脱力感、筋力低下、筋肉痛、四肢痙攣、麻痺などの症状が現れたら、服用を中止して、受診するようにしてください。
(5)肝機能障害
肝臓の機能が低下した状態です。だるくなったり、時には、黄疸がでたりします。その場合は、服用を中止手、受診するようにしてください。血液検査で診断できます。
(6)その他
過敏症で発赤やかゆみがでたり、気持ち悪くなったり、下痢したりすることがあります。
すぐに病院を受診しないといけないような症状を引き起こすこともありますので、注意が必要です。過敏症は、長期間の服用というよりは、すぐに起きる事があります。
2.こむら返りや足の攣りの他、腹痛や生理痛などが頻繁に起きる場合の対処法
芍薬甘草湯は、筋肉のひきつりを改善することに特化した漢方薬です。
緊急時に服用するためのもので、筋肉のひきつりを起こさないように飲む漢方薬ではありません。
筋肉のこわばりは、血虚が原因だと漢方医学では考えます。
血虚は血の不足。
血虚を改善する漢方薬を服用し、血虚を改善できれば、筋肉の引きつりが起きなくなります。血虚を改善する漢方薬は、四物湯、当帰芍薬散、当帰建中湯などたくさんあります。
その中から最適なものを漢方薬に詳しい医師や薬剤師に相談して選んでもらい、服用を続けることで改善できます。
まとめ
芍薬甘草湯は、筋肉の引きつりという緊急事態を改善するお薬です。
これの症状が出た時に緊急的に使う分には、まず服用が起こることはありません。
ただ、長期間にわたり服用する場合は、間質性肺炎、偽アルドステロン症、うっ血性心不全、心室細動、心室頻拍、ミオパチー、肝機能障害などが起こることが報告されています。
むら返りや足の攣りの他、腹痛や生理痛などが頻繁に起きる場合は、血虚と考えられますので、芍薬甘草湯ではなく、血虚を改善する漢方薬を服用することで、改善できます。


