
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断され、排卵誘発剤を使用することになったあなた。
クロミッド、もしくは、レトロゾールを服用したけど、排卵できなかったあなた。
クロミッドを服用していたが、今回からレトロゾールを服用することになったあなた。
レトロゾールとクロミッドの違いについて知りたいのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、現在のPCOSの排卵誘発ではレトロゾールが第一選択となることが増えています。
一方、クロミッドが適している方もおり、どちらが良いかは年齢やホルモン値、これまでの治療経過によって異なります。
この記事では、レトロゾールとクロミッドの違いを比較し、それぞれの特徴や副作用、PCOSではどちらが選ばれやすいのかをわかりやすく解説します。
クロミッドとレトロゾールの比較
| 項目 | クロミッド | レトロゾール |
|---|---|---|
| 作用 | 視床下部・下垂体を介して排卵を促す | アロマターゼ阻害により排卵を促す |
| 排卵率 | 個人差あり | PCOSでは高い場合がある |
| 半減期 | 長い | 短い |
| 多胎妊娠 | やや増える | 比較的低い傾向 |
| 子宮内膜への影響 | 薄くなることがある | 少ないとされる |
| 排卵率 | 高い | 高い |
| 頸管粘液への影響 | 減少しやすい | 少ない |
| 向いている人 | 比較的多い | 多い |
| 卵巣過剰刺激 症候群 | 注射剤より少ない | クロミッドよりもっと少ない |
| 主な副作用 | 頭痛、ほてり、吐き気など | 疲労感、めまい、頭痛など |
レトロゾールとクロミッドの違いを表にまとめました。
排卵には色々なホルモンが関わっていますが、レトロゾールとクロミッドが大きく関わるはエストロゲンというホルモンです。
エストロゲンは、主に卵胞から分泌されるホルモンで、卵胞が大きく育ってくるとそれに伴い血液中のエストロゲン量が増えてきます。脳の視床下部には、エストロゲンを感知するセンサーがついていて、エストロゲンが増えてくると、卵胞が育ってきていると判断し、視床下部から分泌されるGnRHの量を減らし、それに伴い卵胞を育てるホルモンFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)の分泌量も減っていきます。
クロミッドは、視床下部にあるエストロゲンを感知するセンサーに蓋をして、視床下部にエストロゲンの量が足りていないかのように勘違いさせて、卵胞を育てるホルモンであるFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)を長く分泌させます。これにより卵胞が育ちやすくなるのです。
一方、レトロゾールは、卵胞でエストロゲンを作る際に、アンドロゲンからエストロゲンへ変換させるのですが、その時に必要なアロマターゼという酵素を邪魔して、エストロゲンの生成量を減らします。これにより、視床下部はエストロゲンが増えてこないので、卵胞を育てるホルモンFSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌が継続されて、卵胞が育ちやすくなります。また、変換されないで残っているアンドロゲン自体も卵胞に働きかけて卵胞の発育を促進します。これらの働きにより排卵が誘発されます。
クロミッドは、血液中の消失半減期が5日~7日と長いため、FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌時間が長くなる傾向があり、複数の卵胞が育ちやすくなり、多胎妊娠やOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を起こしやすくなります。
一方、レトロゾールは、血液中の消失半減期が2.8日で短いため、多胎妊娠やOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を起こしにくいと言われています。
その他にも、クロミッドは視床下部以外の子宮のエストロゲンを察知するセンサーにも蓋をして、エストロゲンの働きを抑えるため、子宮内膜が厚くなりにくくなったり、頸管粘液の分泌量を減らしてしまい、着床や受精しにくくしてしまうデメリットがあります。レトロゾールには、そのような作用は少ないと言われています。
PCOSではレトロゾールかクロミッドどちらが良い?
PCOSの排卵誘発は、レトロゾールやクロミッドが用いられます。
PCOSの治療指針(⽇産婦2025)によりますと、PCOSの排卵誘発では、レトロゾールが用いられます。副作用が強い場合などでは、クロミッドも考慮されると記載があります。
PCOSの排卵誘発には、レトロゾールが用いられるケースが増えてきていますが、一人一人違いますので、レトロゾールかクロミッドかは医師と相談の上の服用をおすすめいたします。
クロミッドが向いている人
- 子宮内膜の厚さが問題ない
- 以前クロミッドで排卵・妊娠した実績がある
- 費用を最小限に抑えたい
レトロゾールが向いている人
- PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)がある
- クロミッドで子宮内膜が薄くなった
- クロミッドで上手く行かなかった方
レトロゾールやクロミッドで排卵しなかった場合は?
レトロゾールやクロミッドで排卵しなかった場合は、レトロゾールまたはクロミフェンとメトホルミンの併⽤療法が考慮されます。
これらの治療で排卵が起きない場合には、FSH低⽤量漸増療法へと進んでいきます。
※ ただし、他の不妊原因を持っているなどの患者の病状や背景によりFSH低⽤量漸増療法を行らず腹腔鏡下卵巣開孔術(LOD)へ進むこともあります。
FSH低⽤量漸増療法でも難しい場合は、腹腔鏡下卵巣開孔術(LOD)へ進んでいきます。
患者の年齢などの患者背景により不妊症としての治療に重きをおき、⽣殖補助医療に移⾏することも考慮する。
レトロゾールやクロミッドなどの排卵誘発の効果を助け副作用を防止するため漢方薬が役立ちます。
漢方薬は、PCOSによる月経不順や冷え、むくみなど、体質に合わせた改善を目指す治療法です。医療機関での排卵誘発治療と併用されることもあり、体調を整えながら妊娠を目指したい方から相談を受けることがあります。
漢方薬を服用することにより多嚢胞性卵巣症候群の症状の改善が期待できるからです。
実際、漢方薬を服用しながら、クロミッドで排卵誘発をして、人工授精で妊娠したりするケースも多くあります。
排卵誘発による体の負担を減らし、排卵誘発の効果を高めるためにも多嚢胞性卵巣症候群の排卵誘発をする際は、漢方薬の服用をおすすめいたします。
【症例】漢方薬を服用しながら、クロミッドにて排卵誘発をして、人工受精にて妊娠したケース
本事例は、ピルを中止して、妊活を始められた方の症例です。
半年、タイミングをとってこられましたが上手くいきませんでした。
その後、クリニックを受診して血液検査の結果から多嚢胞性卵巣症候群を指摘されました。
その後、漢方薬で妊娠しやすい体づくりができればと丸の内大島薬局に漢方相談に来られました。
胃腸の働きを整えることを目的とした漢方と、水分バランスを考慮した漢方を中心に服用を開始しました。
3ヶ月経った頃には、生理周期が安定して、基礎体温も整ってきました。
クリニックでタイミングをとっていましたが、6ヶ月経った頃から人工授精をすることになりました。
漢方相談にこられてから8ヶ月でクロミッドにて排卵を誘発しながら人工授精を行い妊娠しました。
まとめ
レトロゾールとクロミッドは、どちらも排卵を誘発してくれるお薬ですが、お薬の働きかける部位が全く違います。
クロミッドは、視床下部にあるエストロゲンを察知するセンサーに蓋をして、視床下部がエストロゲン量が足りていないかのように勘違いさせて、GnRHの分泌期間を長くさせることで、卵胞を育てるホルモンFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)も長く分泌させます。これにより卵胞が育ちやすくなるのです。
一方、レトロゾールは、卵胞でアンドロゲンからエストロゲンへ変換する時に必要な酵素であるアロマターゼを阻害し、エストロゲン生成量を減らします。これにより、視床下部はエストロゲンが増えてこないので、卵胞を育てるホルモンFSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌が継続されて、卵胞が育ちやすくなります。そして、アンドロゲン自体も卵胞に働きかけて卵胞の発育を促進します。これらの働きにより排卵が誘発されます。
クロミッドは視床下部以外の子宮のエストロゲンを察知するセンサーにも蓋をして、エストロゲンの働きを抑えるため、子宮内膜が厚くなりにくくなったり、頸管粘液の分泌量を減らしてしまい、着床や受精しにくくしてしまうデメリットがあります。
レトロゾールには、そのような作用は少ないと言われています。
PCOSの排卵誘発では、レトロゾールが用いられます。副作用が強い場合などでは、クロミッドも考慮されます。一人一人お体は違いますので、レトロゾールかクロミッドかは医師と相談の上での服用をおすすめいたします。
なぜなら、漢方薬を服用することにより多嚢胞性卵巣症候群の症状が改善していくからです。
実際、漢方薬を服用しながら、クロミッドで排卵誘発をして、人工授精で妊娠したりするケースも多くあります。
排卵誘発による体の負担を減らし、排卵誘発の効果を高めるためにも多嚢胞性卵巣症候群の排卵誘発をする際は、漢方薬の服用をおすすめいたします。
よくある質問(FAQ)
Q. レトロゾールとクロミッドはどちらが妊娠しやすいですか?
A. どちらが妊娠しやすいかは、原因や体質によって異なります。
特に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方では、近年はレトロゾールが第一選択薬として推奨されることが増えており、クロミッドより排卵率や妊娠率が高いと報告した研究もあります。
一方で、クロミッドがよく効いて妊娠される方も多くいますので、医師が患者さんの状態に合わせて薬を選択します。
Q. PCOSではレトロゾールとクロミッドのどちらがおすすめですか?
A. 現在の診療ガイドラインでは、PCOSによる排卵障害ではレトロゾールが第一選択薬として推奨されることが増えています。
ただし、すべての方に当てはまるわけではありません。年齢、ホルモン値、BMI、これまでの治療経過などを総合的に判断して、医師が最適な治療法を選択します。
Q. クロミッドが効かなかったらレトロゾールに変更することはありますか?
A. はい、あります。
クロミッドを服用しても排卵しない場合や、十分な効果が得られない場合には、レトロゾールへの変更が検討されることがあります。
また、クロミッドによる子宮内膜の菲薄化や頸管粘液の減少が問題となる場合にも、レトロゾールへの変更が選択されることがあります。
Q. レトロゾールでも排卵しない場合はどうなりますか?
A. レトロゾールでも排卵がみられない場合には、メトホルミンの併用、ゴナドトロピン療法(FSH製剤)、腹腔鏡下卵巣開孔術(LOD)などが検討されます。
患者さんの年齢や妊娠希望期間、他の不妊原因の有無によっては、生殖補助医療(体外受精など)が選択されることもあります。
Q. レトロゾールとクロミッドでは副作用に違いがありますか?
A. はい、それぞれ副作用の特徴が異なります。
クロミッドでは、ほてり、頭痛、吐き気のほか、子宮内膜が薄くなったり頸管粘液が減少したりすることがあります。
レトロゾールでは、疲労感、頭痛、めまいなどがみられることがありますが、子宮内膜や頸管粘液への影響は比較的少ないとされています。
Q. 双子になりやすいのはどちらですか?
A. 排卵誘発剤はいずれも複数の卵胞が育つ可能性がありますが、一般的にはクロミッドの方が多胎妊娠の頻度がやや高いとされています。
そのため、治療中は超音波検査などで卵胞の発育を確認しながら安全に治療を進めることが重要です。
Q. 子宮内膜が薄い人にはどちらが向いていますか?
A. クロミッドでは子宮内膜が薄くなることがあるため、その影響が問題となる場合にはレトロゾールが選択されることがあります。
ただし、原因は人それぞれ異なるため、自己判断で薬を変更せず、必ず主治医と相談してください。
Q. 漢方はレトロゾールやクロミッドと併用できますか?
A. はい、医師の治療と併用されることがあります。
漢方では、PCOSによる月経不順や冷え、むくみ、疲れやすさ、ストレスなど、体質全体を考慮して治療を行います。
薬の飲み合わせや治療方針については、主治医や漢方に詳しい薬剤師へ相談することをおすすめします。
Q. レトロゾールとクロミッドは自己判断で変更できますか?
A. いいえ。どちらも排卵誘発剤であり、使用方法や適応が異なるため、自己判断で変更することは避けましょう。
治療効果や副作用を確認しながら、医師が適切な薬剤や用量を調整します。
Q. レトロゾールとクロミッドのどちらを選ぶべきか迷っています。
A. どちらが適しているかは、PCOSの状態、年齢、ホルモン検査の結果、過去の治療歴などによって異なります。
「どちらが良い薬か」ではなく、「ご自身に合った薬はどちらか」が重要です。不安や疑問がある場合は、遠慮なく主治医や薬剤師へ相談しましょう。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)完全ガイド|原因・症状・診断・治療・漢方まで薬剤師が詳しく解説


