
大建中湯と小建中湯の違いに疑問を持たれたあなた。大建中湯と小建中湯は、名前は大と小の違いだけですが、その働きは大きく異なります。
今回、大建中湯と小建中湯の働きの違いについて解説させていただきます。
大建中湯の小建中湯の働きの違いについて
漢方の古典「金匱要略」より
大建中湯も小建中湯も中国で3世紀にまとめられた漢方の古典「金匱要略」に記載のある漢方薬です。金匱要略は、~編~編という形でまとめられていて、それぞれの編ごとに~という症状の時に用いられる漢方薬が列挙されています。大建中湯は金匱要略の腹満寒仙宿食病編、小建中湯は金匱要略の血痺虚労編に記載されています。
このように用いられる場面が違うことからも大建中湯と小建中湯の働きの違いが判ると思います。
大建中湯は、腹満寒仙宿食病編の中の寒仙に効果のある漢方薬で、寒仙は寒冷によって腹中が拘攣して、おへその周りが痛む病気です。小建中湯は、血痺虚労の中の虚労に使用される漢方薬で、虚労とは過労や消耗性疾患のために肉体や精神の機能が低下した状態です。
ここからも大建中湯は、腸の冷えを取り除く漢方薬ですが、小建中湯は、弱った胃腸の機能を高める漢方薬だということが分かります。
大建中湯と小建中湯を構成する生薬から説明します
大建中湯を構成する生薬
乾姜 蜀椒 人参 膠飴
蜀椒(しょくしょう)
蜀椒(しょくしょう)は、山椒(さんしょ)の柄と黒色の種子を除いたもので、辛く温める生薬で、お腹を温めて腹痛を治してくれます。
乾姜(かんきょう)
乾姜(かんきょう)は、生姜の根を湯通しして干したもので、辛く温める生薬で、身体の内部の深いところを温めて、腸の動きを正常化します。
人参(にんじん)
人参(にんじん)は、甘く少し冷やす生薬で、胃腸や膵臓の働きをよくして、体全体の内臓の働きを良くしていきます。
膠飴(こうい)
膠飴(こうい)は、水飴で、甘くて温める生薬で、特に脾胃(胃や膵臓)に元気をつけて、体を元気にします。また。お腹の痛いのを治します。甘味は、心を助けますので、心臓のポンプの働きを助けて血行をよくします。
すべての生薬を合わせて大建中湯の働きを考えてみると
蜀椒と乾姜でお腹を温め、膠飴で脾胃に元気を付けて、人参で胃腸の機能を高めて、腹痛とともに腸の動きを正常化していきます。
小建中湯を構成する生薬
桂枝 芍薬 生姜 甘草 大棗 膠飴
桂枝(けいし)
桂枝(けいし)は、辛く温める生薬で、陽気を補い、発汗を促します。
芍薬(しゃくやく)
芍薬(しゃくやく)は苦くて温めも冷やしもしない生薬で、筋肉のたるみをひきしめて痛みや凝りをとります。
生姜(しょうきょう)
生姜(しょうきょう)は、ショウガのことで、辛く温める生薬で、胃を温めて発汗させる働きがあります。
甘草(かんぞう)
甘草(かんぞう)は、甘くて温めも冷やしもしない生薬で、気力を増やす働きがあります。
大棗(たいそう)
大棗(たいそう)は、なつめの実で、甘くて温めも冷やしもしない生薬で、胃を元気にして血のめぐりをよくする働きがります。
膠飴(こうい)
膠飴(こうい)は、水飴で、甘くて温める生薬で、特に脾胃(胃や膵臓)に元気をつけて、体を元気にします。また。お腹の痛いのを治します。甘味は、心を助けますので、心臓のポンプの働きを助けて血行をよくします。
すべての生薬を合わせて考えてみると
甘草と生姜と大棗と膠飴で脾胃(胃や膵臓)を元気にして血流を良くして、全身に酸素と栄養を届けられるようになり、疲労が取れます。生姜と桂皮の働きで、陽気を発散させて体中を元気にします。また、お腹の痛みも取ってくれます。
まとめ
大建中湯と小建中湯は、名前は大と小の違いだけですが、働きは大きく異なります。大建中湯は、腸の冷えを取り除く漢方薬ですが、小建中湯は、弱った胃腸の機能を高める漢方薬です。
小建中湯も大建中湯も腹痛に用いられますが、大建中湯の腹痛は、腸が冷えて起こる腹痛に用いますが、小建中湯の腹痛は、体の機能が低下して、血行が悪くなって起こる腹痛に用います。


