
五苓散と苓桂朮甘湯との違いについて知りたいあなた。
五苓散と苓桂朮甘湯では、構成する生薬が少し違います。茯苓、白朮、桂枝は共通ですが、そのほかに五苓散には猪苓と沢瀉が配合され、苓桂朮甘湯には甘草が配合されています。この猪苓と沢瀉と甘草の違いにより、効能効果が変わってきます。
2つの漢方薬の効能効果をみると、めまいや頭痛など共通の効能効果がありますが、苓桂朮甘湯は、神経質、ノイローゼ、動悸、息切れなどの効能があり、五苓散には、浮腫、下痢、悪心、嘔吐などの効能があります。これらが猪苓と茯苓と甘草の働きの違いとなります。
今回、苓桂朮甘湯と五苓散の大きな違いについて、構成する生薬からと効能効果からまとめました。
苓桂朮甘湯と五苓散の違いについて
構成する生薬の違い
苓桂朮甘湯
- 茯苓(甘・平)4.0
- 桂枝(辛・温)3.0
- 白朮(苦・温)2.0
- 甘草(甘・平)2.0
五苓散
- 猪苓(甘・平)1.8
- 沢瀉(甘・寒)3.05
- 茯苓(甘・平)1.8
- 桂枝(辛・温)1.2
- 白朮(苦・温)1.8
苓桂朮甘湯と五苓散を構成する生薬を記載しました。
2つの漢方薬を構成する生薬はとても似ていて、苓桂朮甘湯の甘草を除き、猪苓と沢瀉を加えると五苓散となります。苓桂朮甘湯の甘草も五苓散の猪苓と茯苓も甘い生薬で同じであるが、沢瀉は、寒なので、熱を取り、乾きを潤す働きがあります。よって五苓散は、体に熱を過剰に持っている部分があることがわかります。この熱を沢瀉でとることで水分停滞が改善し、おしっこから余分な水分が取り除かれます。
一方、苓桂朮甘湯の甘草は、桂枝と一緒に組むことで体表の陽気を強く補う働きがあります。よって、苓桂朮甘湯は陽気が不足していることが分かります。
さらに、苓桂朮甘湯の合うタイプでは、陽気の不足により脾胃の働きが弱まり、余分な水が発生しています。体表の陽気が少ない状態だと陽気がどんどん体表から失われてしまうため、血の陽気も失われ、血液循環も悪くなり、心臓に負担がかかります。体表の陽気が失われると、下からの気の突き上げが起こり、余分な水がこれと合わさって、動悸が起きたり、息切れがしたり、めまいやふらつきや頭痛が起きます。苓桂朮甘湯の桂枝甘草で陽気を補いつつ、白朮と茯苓でおしっこから余分な水分を取り除くことにより症状を改善します。
2つの漢方薬の効能効果の違い
五苓散と苓桂朮甘湯の効能効果を記載しました。
五苓散
口渇、尿量減少するものの次の諸症:浮腫、ネフローゼ、二日酔い、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病
苓桂朮甘湯
めまい、ふらつきがあり、または動悸があり尿量が減少するものの次の諸症:神経質、ノイローゼ、めまい、動悸、息切れ、頭痛
五苓散には、口渇があります。これは、沢瀉がとってくれる熱の影響で口が乾くからです。熱の影響で、余分な水をおしっこで出せず尿量が減少し、余分な水がたまり、浮腫、ネフローゼ、二日酔い、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病を改善します。
苓桂朮甘湯は、動悸や息切れがあります。これは、1-1 で説明した理由によるものです。
まとめ
五苓散と苓桂朮甘湯では、構成する生薬が少し違います。茯苓、白朮、桂枝は共通ですが、そのほかに五苓散には猪苓と沢瀉が配合され、苓桂朮甘湯には甘草が配合されています。
この猪苓と沢瀉と甘草の違いにより、効能効果が変わってきます。五苓散の沢瀉は、熱を冷まし、猪苓と組んでおしっこの出をよくします。苓桂朮甘湯の甘草は、桂枝を組んで、体表の陽気を強く補います。
2つの漢方薬の効能効果をみると、めまいや頭痛など共通の効能効果がありますが、苓桂朮甘湯は、神経質、ノイローゼ、動悸、息切れなどの効能があり、五苓散には、浮腫、下痢、悪心、嘔吐などの効能があります。


