
苓桂朮甘湯が自律神経失調症に良いと聞いたあなた。
医師より自律神経失調症に苓桂朮甘湯を処方されて、苓桂朮甘湯がどんな漢方薬か知りたくなったあなた。
苓桂朮甘湯は、三世紀ごろ中国でまとめられた医学書「傷寒論」「金匱要略」に記載のある非常に歴史ある漢方薬です。
苓桂朮甘湯は確かに医師より自律神経失調症の患者様に処方されることのある漢方薬です。
ただし、 すべての自律神経失調症に効果があるわけではなく、漢方薬の場合、自律神経失調症を引き起こしている東洋医学的な病態と病態を改善する漢方薬が一致した場合には、症状が改善していきますが、病態と漢方薬が一致しない場合は、症状が改善しないばかりか、副作用が出てしまうこともあります。
今回、自律神経失調症に苓桂朮甘湯を服用するあなたに向けて、
1. 自律神経失調症とは?
2. 苓桂朮甘湯が改善する東洋医学的な病態
3. 苓桂朮甘湯の合う方がほぼ共通で自覚している5つの自覚症状
自分に合った漢方薬を選ぶことは、とても難しいことです。
ただ、自分に合った漢方薬と出会った場合、中々治らなかった辛い症状が、嘘みたいに治ることがあります。
自分に合う漢方薬に出会い、辛い症状を改善されることを心から願っております。
目次
1.自律神経失調症
自律神経失調症は、長期間自律神経のバランスが乱れた状態です。自覚症状としては、
- 急な動悸が起こる
- めまいや立ち眩みが起こる
- 吐き気や頭痛がする
- やる気が出ない
- 集中力が散漫になる
- 何もない時でも不安感や恐怖感を感じる
- 情緒不安定
- 被害妄想
- うつ症状
など、肉体的な症状もあれば、精神的な症状まで幅広くあります。
日本心身医学会では、暫定的な定義として
「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的な病変が認められず、かつ顕著な精神障害ではないもの」
となっており、臨床検査では何も異常が見つからない状態と言えます。多くの場合は、自律神経のうち交感神経系が優位な状態が続いた結果起きます。
2.苓桂朮甘湯の効能効果について
苓桂朮甘湯が自律神経失調に効果があることをお伝えするために、添付文書の内容を紹介します。
コタロー苓桂朮甘湯の添付文書には以下のように記載されています。
立ちくらみやめまい、あるいは動悸がひどく、のぼせて頭痛がし、顔面やや紅潮したり、あるいは貧血し、排尿回数多く、尿量減少して口唇部がかわくもの。
神経性心悸亢進、神経症、充血、耳鳴、不眠症、血圧異常、心臓衰弱、腎臓病。
1の自律神経失調症の自覚症状に記載しためまいや立ちくらみや動悸などの記載が苓桂朮甘湯の効能効果にあることから、これらの症状がある自律神経失調症に効果的であることが分かります。
ただし、漢方薬の効能には、特徴があります。症状を引き起こしている東洋医学的な病態と病態を改善する漢方薬が一致した場合に症状が改善していきます。
次にどのようなタイプの方に苓桂朮甘湯が合うかについて説明していきます。
2.苓桂朮甘湯のあうタイプとは
1)苓桂朮甘湯の条文から考えると
傷寒論太陽病中編 37条
傷寒で、吐いたり、下したりして、胸部が張っている、気が上って胸を衝き、起き上がろうとするとめまいが起こり、脈は沈緊である。このような状態の時に発汗させると、ふらふらとしてめまいが起こる。このような時は、苓桂朮甘湯の主治である。
金匱要略 痰隠咳嗽病 17条
心窩部に痰飲があり、胸脇部が膨満し、めまいがするのは、苓桂朮甘湯の主治である。
2つの条文から、胸が詰まった感じがあり、下から衝き上下られるような症状があり、ふわふわしてめまいがする場合に効果があることが分かります。
2)苓桂朮甘湯を構成する生薬から考えると
次に苓桂朮甘湯が東洋医学的にどのような病態を改善する漢方薬について配合されている生薬から説明していきます。
苓桂朮甘湯
茯苓 (甘・平)
桂枝 (辛・温)1.8
白朮 (苦・温)3.0
甘草 (甘・平)1.2
苓桂朮甘湯は、温める(温)生薬が2つ、温めも冷やしもしない生薬(平)が2つで構成されています。強くはありませんが、温める働きがある漢方薬であることが分かります。
甘草は桂枝とともに気のめぐり、偏った血液のめぐりを正常にして、白朮は桂枝とともに表を温め、また、茯苓と協力して小便を通じて体内の過剰な水分を取り除きます。
余分な水が邪魔しているために、動悸やめまいを起こしている状態を改善してくれることが分かります。
3)まとめると
このようなタイプの方にあうことが分かります。
3.苓桂朮甘湯により自律神経失調症に効果が期待できる人が日頃感じている5つの自覚症状
ご自身が、苓桂朮甘湯で自律神経失調症の改善が期待できるかチェックするために、苓桂朮甘湯の合う人は、どのような自覚症状を感じているかについて説明させていただきます。
苓桂朮甘湯は、
1)心窩部につまり感がある
2)動悸や息切れがある
3)めまいがある
4)おしっこの回数は多いが量は少ない
5)頭痛がある
という5つの自覚症状を持っている方にピッタリの漢方薬です。
これは、苓桂朮甘湯の傷寒論と金匱要略の条文、添付文書の効能効果から分かります。
まとめ
苓桂朮甘湯は自律神経失調症の患者様に処方されることのある漢方薬です。それは、自律神経失調症の自覚症状のめまいや立ちくらみや動悸などが苓桂朮甘湯の効能効果にあることから分かります。苓桂朮甘湯は、余分な水が邪魔しているために、動悸やめまいを起こしている状態を改善してくれます。


