多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)はPMSがひどい?生理前の症状との関係を薬剤師が解説

「生理前になると体調が大きく崩れてしまう。PCOSとPMSには関係があるの?」

「PCOSで生理周期が乱れているけれど、PMSも関係しているのでしょうか?」

このように、PCOSとPMSの関係について悩んでいる方は少なくありません。

結論から言うと「PCOSだから必ずPMSがひどくなる」とは言い切れません

ただ、PMSとアンドロゲン(男性ホルモン)の関連を示した研究があります。1992年の研究では、強い月経前のイライラや気分の落ち込みがある女性で、遊離テストステロンが月経周期の複数の時期で高かったことが報告されています。

PCOSでは、テストステロンなどの男性ホルモン(アンドロゲン)が高くなることがあります。こうしたアンドロゲンの状態と、PMSの症状の強さには関連がある可能性が研究で示されています。ただし、「アンドロゲンが高いからPMSがひどくなる」と単純に考えられるわけではなく、ほかのホルモンや体質など、さまざまな要因が関係していると考えられています。そのため、アンドロゲン過剰を伴うPCOSの方でPMSの症状が強い場合には、PMSだけでなく、月経周期や排卵、ホルモン状態なども含めて考えることが大切です。

この記事では、PCOSとPMSの関係、生理前の症状がひどくなる理由、受診を考えたほうがよいケース、妊娠を希望している場合の考え方について解説します。

 

PCOSだとPMSがひどくなるの?

PCOSだから必ずPMSがひどくなる」とは言い切れません。

PCOSの方でもPMSにならない方はいますし、PMSの症状の強さには個人差があります。

ただし、PMSとアンドロゲン(男性ホルモン)の関連を示した研究があります。

1992年に発表された研究では、強い月経前のイライラや気分の落ち込みなどを訴える女性と、月経前の症状がない女性を比較したところ、PMSの女性では遊離テストステロンが月経周期の複数の時期で高かったことが報告されています。

特に研究者らは、月経前の精神症状にアンドロゲンが関与している可能性を指摘しています。

一方、PCOSは、月経周期の異常や排卵障害に加えて、アンドロゲン過剰などがみられることが特徴の一つです。実際に、PCOSの女性では、健常女性と比較してテストステロンなどのアンドロゲンが高かったことを示す研究があります。

このことから、

「アンドロゲンが高いこと」と「PMSの症状の強さ」には何らかの関連がある可能性があり、アンドロゲン過剰を伴うPCOSの方では、PMSの症状についても注意して観察する必要があると考えられます。

ただし、ここで注意したいのは、「PCOSの人はPMSがひどくなりやすい」と直接証明されたわけではないということです。

つまり、「PCOSではアンドロゲンが高くなることがある」ことと、「アンドロゲンが高い女性ほどPMSが強い」という研究結果を組み合わせた場合、PCOSとPMSの間に関連がある可能性は考えられますが、PCOSがPMSを引き起こすことを意味するものではありません。

PMSとテストステロンの関係については、研究によって結果が一致しているわけではありません。そのため、現時点では「PCOSだからPMSが重くなる」と断定するのではなく、PCOSの方で生理前の症状が強い場合には、月経周期や排卵、ホルモン状態などを含めて総合的に考えることが大切です。

PCOSの方が「PMSがひどい」と感じたら

「PCOSだから仕方がない」と我慢する必要はありません。

特に、

  • 生理前になると強くイライラする
  • 気分が落ち込む
  • 不安が強くなる
  • 胸が張る
  • むくみがひどい
  • 頭痛がする
  • 食欲が増える
  • 便秘になる
  • 生理前になると強い眠気や疲労感が出る

などの症状が毎月繰り返される場合には、月経周期との関係を記録してみましょう。

そして、

「症状がいつから始まり、生理が始まるとどう変化するのか」

を確認することが大切です。

PCOSの方では、PMSだけでなく排卵障害や月経不順なども関係している可能性があるため、症状だけで「PMSが原因」と決めつけないようにしましょう。

PCOSの方が「PMSがひどい」と感じるときに確認したいこと

PCOSの方の場合、単に「PMSがひどい」と考えるのではなく、次のような点を確認してみましょう。

症状は生理の何日前から始まるか?

PMSは月経前に症状が現れ、月経が始まると軽快することが特徴です。

「いつも生理の1週間くらい前から症状が出る」というように、ある程度決まったパターンがあるか確認してみましょう。

生理が始まると症状は軽くなりますか?

PMSかどうかを考えるうえで重要なポイントです。

生理が始まって数日すると、

「イライラがなくなる」
「気分が戻る」
「むくみが取れる」

というように症状が改善するのであれば、月経周期との関連が考えられます。

毎月同じような症状が出てますか?

症状を記録しておくと、自分の月経周期との関係が分かりやすくなります。

「生理前になると毎回イライラする」

「生理前だけ頭痛が起こる」

など、毎月同じようなパターンがあるか確認してみましょう。

排卵はしていますか?

ここはPCOSの方では特に重要です。

PCOSでは排卵が不規則になることがあるため、「生理前だと思っている時期」が必ずしも排卵後の時期とは限りません。

月経周期が長い、何か月も生理が来ない、排卵しているか分からないという場合には、PMSだけに原因を求めないことが大切です。

 

「生理前の症状がひどい=PCOSが悪化した」というわけではありません

PMSがひどくなったからといって、それだけでPCOSが悪化したとは判断できません。

PCOSは月経周期や排卵、高アンドロゲン状態などを総合的に評価して診断する疾患です。

そのため、

「最近PMSがひどい」
    ↓
「PCOSが悪化した」

と自己判断するのは避けましょう。

月経周期が以前より長くなった、月経が何か月も来ない、ニキビや多毛などの症状が強くなったなど、ほかの変化もある場合には婦人科で相談することをおすすめします。

 

PMSがひどい場合、どうすればいい?

まずは自分の症状を記録してみましょう。

例えば、

  • 月経開始日

  • 月経周期

  • 生理前に症状が始まった日

  • イライラ

  • 気分の落ち込み

  • 頭痛

  • むくみ

  • 胸の張り

  • 食欲の変化

  • 睡眠状態

などを記録します。

1~2か月程度記録すると、症状と月経周期の関係が見えやすくなります。

日常生活に支障があるほど症状が強い場合には、我慢せず婦人科に相談しましょう。

PMSの治療では、症状や妊娠希望の有無などを考慮し、低用量ピル、SSRI、漢方薬などが選択肢となります。日本産科婦人科学会も、PMSに対する治療の一つとして漢方薬を挙げています。

 

妊娠を希望している場合はどう考えればいい?

PCOSで妊娠を希望している方の場合、PMSだけを見るのではなく、「排卵しているか」「月経周期はどうなっているか」を確認することが重要です。

例えば、

「生理前の症状はあるけれど、排卵しているか分からない」

「生理周期が40~50日以上になる」

「何か月も生理が来ない」

という場合には、PMSの対策だけではなく、PCOSによる排卵障害についても婦人科で相談したほうがよいでしょう。

PCOSは不妊症の原因としても重要な疾患であり、日本産科婦人科学会は2024年に診断基準を改定し、2025年には治療指針も改訂しています。

妊娠を希望している場合には、PMSの症状だけを改善しようとするのではなく、月経・排卵・妊娠希望を含めて全体的に考えることが大切です。

PMSとPMDDの違いにも注意

「生理前のイライラがひどい」という場合には、PMSだけでなくPMDD(月経前不快気分障害)が関係していることもあります。

特に、

  • 強い抑うつ感がある

  • 強い不安がある

  • 怒りやイライラが非常に強い

  • 人間関係に大きな影響が出ている

  • 仕事や家事ができないほどつらい

  • 生理が始まると症状が改善する

といった場合には、自己判断で「PCOSだから仕方ない」と考えず、婦人科などの医療機関に相談しましょう。

PCOSでPMSがひどい場合、漢方という選択肢もあります

PMSでは、症状や体質に応じて漢方薬が用いられることがあります。

日本産科婦人科学会の一般向け情報でも、PMSに対して加味逍遥散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、抑肝散などの漢方薬が挙げられています。

ただし、「PMSならこの漢方」というように一律に決められるものではありません。

例えば、

「イライラが強い」

「冷えやむくみが気になる」

「生理痛もある」

「疲れやすい」

「生理周期が長い」

など、症状や体質によって考え方が変わります。

また、PCOSで妊娠を希望している場合には、妊活の状況や婦人科での治療内容なども含めて考える必要があります。

そのため、漢方を利用する場合も、現在の婦人科での治療内容を踏まえて専門家に相談することが大切です。

 

「PCOSでPMSがひどかった方の漢方相談例」

本事例は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断を受け、クロミッドによる排卵誘発を実施しましたが、副作用のため2周期で断念されました。

その後、漢方薬により多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を改善したいと相談されました。

PMSの症状も強く、生理痛がある、生理前の胸の張りや便秘の症状もあり、それらの症状と生活習慣を踏まえ、漢方薬と栄養補助を組み合わせて開始しました。

漢方薬を服用して約3か月後の2回目の生理では、PMS(イライラや頭痛や食欲の増加)がこれまでで最も軽く感じるまで改善しました。

漢方相談

PMSの症状も強く、生理痛がある、生理前の胸の張りや便秘の症状もあり、それらの症状と生活習慣を踏まえ、漢方薬と栄養補助を組み合わせて開始しました。

その後は、2週間に1度のペースでお体の状態を伺い、その時点のお身体の状態に合わせた漢方薬をご提案しました。

生活面でのアドバイス

  • 朝食は和食でしっかり摂取してもらうこと
  • 休息する時間を確保すること
  • 睡眠時間を十分に確保する
  • シャワーで済まさず、じわっと汗をかくまでしっかり湯船につかること
  • ストレス対策として飲酒をされていましたので、体の負担を考えて、禁酒ではなく量を減らしてもらうようにお願いした

相談後の経過

初回

体質や生活習慣を踏まえ、漢方薬と栄養補助を組み合わせて開始しました。

1か月後(生理周期59日)

クロミフェンの影響も考えられる中で生理が来潮しました。

この時点で、

  • 胸の張りが軽減
  • 生理前の便秘
  • 食欲増加
  • お腹の張り
  • 風邪のような症状

などがみられたため、お身体の状態に合わせて漢方薬を調整しました。

次周期(36日)

  • PMS(イライラや頭痛や食欲の増加)がこれまでで最も軽く感じられた
  • 経血の塊が減少
  • 鮮やかな赤色の経血が増えた

【症例】33歳|PCOSクロミッド副作用で中止後当帰芍薬散などで生理周期32〜34日に安定

※これは一例であり、同じ漢方薬を服用すれば同じ経過になることを示すものではありません。また、PCOSやPMSの症状・経過には個人差があります。

まとめ|PCOSで「PMSがひどい」と感じたら、症状だけで判断しないことが大切

PCOSの方が「PMSがひどい」と感じることはありますが、PCOSだから必ずPMSが重くなるとは限りません

PCOSとPMSの両方でお悩みの場合、「PMSだけ」「PCOSだけ」と分けて考えるのではなく、月経周期、排卵、体調、生活習慣などを含めてご自身の状態を整理することが大切です。

大切なのは、

  • 生理前のいつから症状が始まるのか

  • 生理が始まると改善するのか

  • 毎月同じパターンなのか

  • 排卵しているのか

  • 月経周期がどのようになっているのか

を確認することです。

特に、PCOSで妊娠を希望している方は、PMSだけに注目するのではなく、排卵や月経周期についても確認しておきましょう。

「生理前のイライラや気分の落ち込みが強い」

「PMSとPCOSの関係が知りたい」

「妊娠を希望しているので、ピル以外の方法について相談したい」

という方は、一人で悩まず婦人科や漢方の専門家に相談してみてください。

当薬局では、PCOSに伴う月経不順や生理前のイライラ、胸の張り、むくみ、頭痛などについて、現在の婦人科での治療内容や妊娠希望なども伺いながら漢方相談を行っています。

 

よくある質問

Q. PCOSだとPMSがひどくなりますか?

PMSは月経前の3~10日程度に症状が現れ、月経開始後に軽快することが特徴です。一般的には排卵後の黄体期に症状が現れますが、PCOSでは排卵が不規則なことがあるため、「生理前の症状=PMS」と単純に判断しないことが大切です。

Q. PCOSで排卵していなくてもPMSになりますか?

「生理前だと思っている時期」の症状がすべてPMSとは限りません。PCOSでは排卵が不規則になることがあるため、症状と排卵の関係を確認することが大切です。

Q. PCOSの生理前のイライラがひどいのはなぜですか?

PMSでは女性ホルモンの変動などが関係すると考えられています。ただし、強い精神症状がある場合にはPMDDなどの可能性もあるため、症状が生活に支障をきたしている場合は医療機関に相談しましょう。

Q. PCOSでPMSがひどい場合、漢方薬で改善できますか?

PMSには漢方薬が用いられることがあります。ただし、適した漢方薬は症状や体質によって異なります。PCOSで妊娠を希望している場合は、排卵や婦人科での治療内容も考慮して相談することが大切です。

Q. PMSがひどい場合は婦人科を受診したほうがいいですか?

日常生活や仕事、人間関係に支障が出るほど症状が強い場合は、婦人科への相談をおすすめします。特に強い気分の落ち込みや不安、怒りなどがある場合は我慢しないことが大切です。

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丸の内大島薬局では、症状の大小にかかわらず、
お一人おひとりの体と心に寄り添ったご相談を大切にしています。
どんな小さなお困りごとでも、まずはお気軽にご相談ください。

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