
「PCOSと診断されてから、以前より疲れやすくなった気がする」
「十分寝ているはずなのに、日中眠い」
「生理不順だけでなく、体がだるいのもPCOSと関係しているのでしょうか?」
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)でお悩みの方の中には、このような「疲れやすさ」「だるさ」「眠気」を感じている方もいます。
PCOSは月経不順や排卵障害、アンドロゲン過剰などがよく知られていますが、PCOSのある方では、代謝・睡眠・心理面などにもさまざまな問題が起こることがあります。
そのため、疲れやすさを感じたときには、「PCOSだから疲れている」と単純に考えるのではなく、PCOSに関連するさまざまな要因を考えることが大切です。
この記事では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と疲れやすさ・だるさ・眠気との関係について、薬剤師の立場から分かりやすく解説します。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)で疲れやすいと感じることはある?
結論からいうと、PCOSのある方が疲れやすさや日中の眠気を感じることはあります。
ただし、「疲れやすい」という症状だけでPCOSと判断することはできません。
PCOSでは、インスリン抵抗性などの代謝異常、睡眠の問題、心理的な負担などが関連することがあります。
2023年の国際PCOSガイドラインでも、PCOSでは代謝、睡眠、心理面などを含めて幅広く健康状態を評価することが重要とされています。
そのため、
- 疲れやすい
- 体がだるい
- 日中眠い
- 朝すっきり起きられない
- 寝ても疲れが取れない
という症状がある場合には、PCOSとの関係だけでなく、ほかの原因も含めて考えることが大切です。
PCOSで疲れやすくなると考えられる原因
PCOSで疲れやすいと感じる場合、いくつかの原因が考えられます。
インスリン抵抗性などの代謝異常
PCOSでは、インスリン抵抗性が病態の一部として関係することがあります。
インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込むために重要なホルモンです。
インスリンが効きにくい状態になると、血糖値を維持するために体内でより多くのインスリンが必要になることがあります。
PCOSではインスリン抵抗性が重要な病態の一つとされていますが、インスリン抵抗性の程度を日常診療で単純に測定して判断することは推奨されていません。
「疲れやすいからインスリン抵抗性がある」と決めつけることはできませんが、PCOSでは代謝面についても確認することが重要です。
睡眠の質が低下している
PCOSで疲れやすい場合、ぜひ確認しておきたいのが睡眠の状態です。
PCOSの女性では、PCOSではない女性と比較して閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の頻度が高いことが知られています。
2023年の国際ガイドラインでは、PCOSの女性について、
- いびき
- 寝てもすっきりしない
- 日中の眠気
- 疲労感
などがある場合には、睡眠時無呼吸について評価することが推奨されています。
例えば、
「夜は7~8時間寝ているのに、昼間に強い眠気がある」
「朝起きても疲れが取れていない」
という場合は、単なる「疲れやすい体質」と考えず、睡眠の問題が隠れていないか確認することも大切です。
生理不順やホルモン変動による体調不良
PCOSでは、排卵がうまく起こらず、生理周期が長くなることがあります。
生理が何週間、何か月も来ない状態を繰り返していると、
「いつ生理が来るのか分からない」
「体調の変化を予測しにくい」
といった不安を感じる方もいます。
また、生理周期の乱れだけでなく、月経前の症状や気分の変化などが重なることで、日常生活の負担が大きくなることもあります。
ただし、疲労感をホルモンバランスだけで説明できるとは限りません。
ストレスや精神的な負担
PCOSでは、生理不順や妊娠への不安、体重・ニキビ・多毛などの症状によって精神的な負担を感じる方もいます。
また、妊活中であれば、
「いつ排卵するのだろう」
「今周期も妊娠できなかった」
「薬を飲み続けて大丈夫なのだろうか」
など、知らず知らずのうちにストレスが積み重なることもあります。
2023年の国際ガイドラインでも、PCOSでは不安や抑うつなどの心理面の問題が増えていることが示され、心理的な健康状態について確認することが推奨されています。
精神的なストレスが続けば、睡眠の質が低下したり、日中の疲労感につながったりすることもあります。
「疲れやすい=PCOS」とは限りません
ここは非常に重要なポイントです。
疲れやすさやだるさは、PCOSだけにみられる症状ではありません。
例えば、
- 睡眠不足
- 睡眠の質の低下
- 貧血
- 甲状腺機能の異常
- 栄養不足
- 過度なダイエット
- ストレス
- 不安や気分の落ち込み
- 感染症などの病気
- 運動不足
など、さまざまな原因があります。
特に、
「最近急に疲れやすくなった」
「以前とは明らかに疲れ方が違う」
「日常生活に支障が出るほどだるい」
という場合には、PCOSだけが原因だと考えず、医療機関で相談することをおすすめします。
PCOSで「疲れやすい・だるい・眠い」ときに確認したいこと
疲れやすさが気になる方は、まず次のような点を振り返ってみましょう。
睡眠について
- 睡眠時間は十分に取れているか
- 朝起きたときにすっきりしているか
- 日中に強い眠気がないか
- いびきを指摘されていないか
- 夜中に何度も目が覚めないか
生理について
- 生理周期が極端に長くなっていないか
- 生理が何か月も来ないことがないか
- 不正出血がないか
- 生理前に強く体調を崩していないか
生活について
- 食事をきちんと取れているか
- 過度なダイエットをしていないか
- 運動不足になっていないか
- 睡眠不足が続いていないか
- 強いストレスを感じていないか
体調について
- 息切れや動悸がないか
- めまいや立ちくらみがないか
- 気分の落ち込みが続いていないか
- 急激な体重変化がないか
このように整理してみると、「疲れやすい」という一つの症状の背景に、さまざまな要因があることが分かります。
PCOSで疲れやすいときは、生活習慣も大切
PCOSの管理では、食事・運動・睡眠などの生活習慣を整えることも重要です。
ただし、
「太っているからPCOSの疲れが出る」
という単純な話ではありません。
PCOSは体重だけで決まる病気ではなく、やせている方にも起こります。
そのため、「疲れやすいからもっと運動しなければ」と無理をするのではなく、自分の体調に合わせて生活を整えていくことが大切です。
例えば、
- 睡眠時間を確保する
- 朝食・昼食・夕食を極端に抜かない
- 無理のない範囲で体を動かす
- 過度な糖質制限や食事制限を避ける
- 疲労が強いときには休息を取る
- ストレスをため込まない
などから始めてみましょう。
国際ガイドラインでも、PCOSの管理において健康的な生活習慣や心身の健康、生活の質を重視しています。
PCOSの疲れやすさに漢方薬は使える?
「PCOSで疲れやすいので、漢方薬を試してみたい」と考える方もいるかもしれません。
漢方では、「PCOSだからこの漢方」というように病名だけで処方を決めるのではなく、
- 疲れやすさ
- 冷え
- むくみ
- 生理周期
- 生理痛
- 月経量
- 睡眠
- 食欲
- 胃腸の状態
- ストレス
- 体質
などを含めて、現在の体調を総合的に考えていきます。
そのため、同じ「PCOSで疲れやすい」という悩みでも、適する漢方薬が同じとは限りません。
また、疲労感の原因に貧血や甲状腺疾患、睡眠時無呼吸など別の病気が隠れている可能性もあります。
漢方薬を考える場合も、必要に応じて医療機関で原因を確認したうえで、体調に合わせて相談することが大切です。
PCOSで疲れやすい方は、どこに相談すればいい?
「PCOSと診断されていて、最近疲れやすくなった」
「生理不順と疲労感の両方が気になる」
「妊活中で、体調も整えたい」
という場合には、まず婦人科などの医療機関に相談することをおすすめします。
特に、
- 強い疲労感が続いている
- 日中の眠気が非常に強い
- いびきがひどい
- 息苦しさがある
- 動悸やめまいがある
- 不正出血が続いている
- 生理が長期間来ない
- 気分の落ち込みが続いている
といった場合は、「PCOSだから仕方がない」とそのままにしないことが大切です。
まとめ|PCOSの疲れやすさは、原因を一つに決めつけないことが大切
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方が「疲れやすい」「だるい」「眠い」と感じることはあります。
しかし、疲労感そのものがPCOSに特有の症状というわけではありません。
PCOSでは、
- インスリン抵抗性などの代謝面
- 睡眠の問題
- 心理的なストレス
- 月経・排卵に関する悩み
- 生活習慣
など、さまざまな要因が重なっている可能性があります。
特に、PCOSでは睡眠時無呼吸の頻度が高く、いびき・寝てもすっきりしない・日中の眠気・疲労感がある場合には、睡眠について確認することが国際ガイドラインでも推奨されています。
「PCOSだから疲れやすい」と決めつけるのではなく、なぜ疲れやすいのかを自分の体調から考えていくことが大切です。
PCOSの症状だけでなく、疲れやすさ、冷え、むくみ、睡眠、ストレス、生理周期など、複数の体調面について相談したい場合は、婦人科などの医療機関への相談に加えて、漢方相談で体質や生活習慣を含めて整理してみる方法もあります。
PCOSで疲れやすい方のよくある質問(FAQ)
Q. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は疲れやすい病気ですか?
PCOSそのものが直接「疲れやすさ」を引き起こすとは限りません。
ただし、PCOSではインスリン抵抗性などの代謝面の問題、睡眠の問題、精神的なストレスなどが関連することがあり、それらが疲労感やだるさにつながっている可能性があります。
そのため、疲れやすい場合は「PCOSだから仕方がない」と考えるのではなく、睡眠や生活習慣、ほかの病気なども含めて原因を考えることが大切です。
Q. PCOSで体がだるいのはなぜですか?
PCOSで体がだるいと感じる場合、原因は一つとは限りません。
例えば、睡眠の質が低下している、精神的なストレスが続いている、生活リズムが乱れているなど、さまざまな要因が考えられます。
また、PCOSでは代謝面の問題がみられることもあります。
「だるさが長く続く」「以前より明らかに疲れやすくなった」という場合には、PCOSだけが原因だと決めつけず、医療機関で相談することをおすすめします。
Q. PCOSだと日中に眠くなりやすいですか?
PCOSの女性では、睡眠時無呼吸症候群(OSA)の頻度が高いことが知られています。
そのため、十分な睡眠時間を取っているにもかかわらず、
- 日中に強い眠気がある
- 朝起きてもすっきりしない
- 疲れが取れない
- いびきを指摘される
といった症状がある場合には、睡眠の問題が隠れていないか確認することが大切です。
「PCOSだから眠い」と考えるのではなく、睡眠の質についても一度振り返ってみましょう。
Q. PCOSで疲れやすいのはホルモンバランスが関係していますか?
PCOSでは排卵障害やアンドロゲン過剰などのホルモンの特徴がみられます。
ただし、「ホルモンバランスが乱れているから疲れやすい」と単純に説明できるわけではありません。
疲労感には睡眠、ストレス、代謝、栄養状態など、複数の要因が関係している可能性があります。
そのため、疲れやすさだけを見てホルモンの状態を判断することはできません。
Q. PCOSで疲れやすいのはインスリン抵抗性が原因ですか?
PCOSではインスリン抵抗性が重要な病態の一つとして知られています。
ただし、「疲れやすい=インスリン抵抗性がある」と判断することはできません。
疲労感には睡眠不足、睡眠時無呼吸、貧血、ストレスなど、ほかにもさまざまな原因があります。
PCOSで疲れやすさが気になる場合は、疲労感だけで原因を判断せず、全身の状態を確認することが大切です。
Q. PCOSで疲れやすい場合、貧血の可能性もありますか?
疲れやすさは貧血でもみられる症状の一つです。
特に、生理の出血量が多い、不正出血が続いている、動悸や息切れ、めまいなどもある場合には、貧血などPCOS以外の原因についても確認する必要があります。
一方、PCOSでは月経回数が少なくなる方もいるため、「PCOSだから貧血になる」と一概にはいえません。
疲労感が強い場合には、自己判断で原因を決めつけず、必要に応じて医療機関に相談しましょう。
Q. PCOSで疲れやすい場合、どんな生活を心がければいいですか?
まずは、睡眠時間を確保し、できるだけ規則正しい生活を心がけることが大切です。
また、食事を極端に制限したり、疲労が強い状態で無理な運動をしたりするのではなく、自分の体調に合わせて取り組みましょう。
PCOSでは健康的な食事、身体活動、睡眠などを含めた生活習慣が重要です。
「疲れやすいからもっと頑張らなければ」と考えるのではなく、十分な休息を取りながら、無理なく続けられる方法を見つけることが大切です。
Q. PCOSで疲れやすい場合、漢方薬で改善できますか?
漢方薬は、疲れやすさだけでなく、冷え、むくみ、生理周期、月経痛、睡眠、食欲、ストレスなど、現在の体調を総合的に考えて選択します。
そのため、「PCOSで疲れやすいから、この漢方薬」というように一律に決まるものではありません。
また、強い疲労感の背景に貧血や睡眠時無呼吸など別の原因が隠れている可能性もあります。
漢方薬を検討する場合も、必要に応じて医療機関で原因を確認したうえで、自分の体質や現在の体調に合ったものを専門家に相談するとよいでしょう。
Q. PCOSで疲れやすい場合、病院を受診したほうがいいですか?
疲れやすさが続いている場合や、日常生活に支障が出るほどのだるさ・眠気がある場合には、医療機関への相談をおすすめします。
特に、
- 強い眠気が続く
- 寝ても疲れが取れない
- いびきがひどい
- 息切れや動悸がある
- めまいや立ちくらみがある
- 不正出血が続いている
- 生理が長期間来ない
- 気分の落ち込みが続いている
といった症状がある場合は、PCOS以外の原因も含めて確認することが大切です。
「PCOSだから疲れやすい」と自己判断せず、気になる症状が続く場合は婦人科などの医療機関に相談しましょう。
Q. PCOSで疲れやすい場合、何科を受診すればいいですか?
PCOSと診断されている方で、月経不順や排卵の問題とともに疲れやすさが気になる場合は、まず婦人科に相談するとよいでしょう。
疲労感が強い場合には、婦人科でPCOSの状態を確認するとともに、必要に応じて貧血や甲状腺機能、代謝、睡眠など、ほかの原因についても相談できます。
「疲れやすい」という症状だけで原因を決めつけず、月経周期や睡眠、食事、ストレスなども含めて伝えると、より状況を整理しやすくなります。

