
「PCOSと診断されて、妊活をしています。でも、仕事との両立がつらくなってきました」
「仕事のストレスが妊活に影響しているような気がします」
「いっそのこと仕事を辞めて、妊活に集中したほうがいいのでしょうか?」
「早く妊娠して、産休や育休に入れたら……」
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)で妊活をしている方の中には、このような思いを抱えている方がいます。
特に、職場の人間関係や残業、通院との両立などでストレスを感じていると、
「仕事を辞めれば、もっと妊活に集中できるのでは?」
と考えてしまうことがあります。
しかし、実際には「仕事を辞める」「仕事を続ける」の二択だけではありません。
転職するのか、今の会社で働き方を変えるのか、通院しながら仕事を続けるのか、一時的に仕事から離れるのか。
そして何より、
「自分にとって、今どの負担を減らすことが必要なのか」
を考えることが大切です。
この記事では、PCOSで妊活をしながら仕事を続けることに悩んでいる方に向けて、
なぜPCOSの妊活中に「仕事を辞めたい」と思うのか
仕事のストレスと妊活をどのように考えるか
仕事を辞める前に整理したいこと
転職という選択肢
今の会社に残るという選択肢
実際に仕事と妊活の両立に悩んだPCOSの漢方相談事例
についてご紹介します。
PCOSで「仕事を辞めたい」と思うのはなぜ?
PCOSだから仕事を辞めたくなる、という単純な話ではありません。
実際には、
PCOSによる体調の悩み+妊活+通院+仕事のストレス
が重なって、「もう仕事を続けるのがつらい」と感じることがあります。
仕事のストレスが大きい
職場の人間関係や仕事量、残業などによるストレスが続くと、家に帰ってからも気持ちが切り替えられないことがあります。
妊活中の場合は、
「今月は排卵したかな?」
「また生理が遅れている」
「今回も妊娠できなかったらどうしよう」
など、妊活についても考えることが増えます。
仕事と妊活の両方に気を使うことで、心身ともに疲れてしまう方もいます。
通院と仕事を両立するのが難しい
PCOSで妊活をしている場合、婦人科や不妊治療専門クリニックに通院することがあります。
診察や超音波検査、排卵誘発、人工授精、体外受精など、治療内容によっては通院の予定を仕事と調整する必要があります。
「また休みを取らなければならない」
「職場に妊活していることをどこまで伝えればいいのかわからない」
という悩みも出てきます。
「早く妊娠して産休・育休に入りたい」と思う
妊活中の方から、
「早く妊娠して、産休・育休に入って仕事を休みたい」
という気持ちを伺うことがあります。
これは単に仕事から逃げたいということではありません。
「今の仕事を続けることがつらい」
「でも、仕事を辞めてしまうと経済的に不安」
「できれば今の会社の福利厚生を利用しながら妊娠したい」
という、相反する気持ちを抱えていることがあります。
こうした葛藤は、PCOSで妊活をしている方にとって、とても大きな心理的負担になることがあります。
PCOSだから仕事を辞めたほうがいいのでしょうか?
結論として、PCOSだから仕事を辞めたほうがよい、とは一概には言えません。
PCOSでは、生殖面だけでなく、代謝面、心理面、生活の質(QOL)など、幅広い面から状態を考えることが重要とされています。2023年の国際PCOSガイドラインでも、健康的な生活習慣だけでなく、感情面やQOLを含めて個人の状況に合わせた支援を行うことが重視されています。
そのため、
「PCOSだから仕事を辞める」
と考えるより、
「今の働き方が、自分の体調や妊活にとって無理のある状態になっていないか」
を考えてみることをおすすめします。
仕事を辞める前に考えてほしいこと
仕事を辞めるほどつらいのであれば、無理をして働き続ける必要はありません。
一方で、退職すると収入や福利厚生、生活リズムなどにも変化が生じます。
そこで、退職を決める前に、次のことを整理してみましょう。
「仕事」がつらいのか、「今の働き方」がつらいのか
例えば、
営業という仕事そのものがつらい
残業が多い
休日出勤がつらい
職場の人間関係がつらい
通院のために休みを取りにくい
妊活について職場に相談しにくい
では、必要な対策が違います。
もし「仕事そのもの」よりも「今の働き方」が負担になっているのであれば、
残業を減らす
部署を変える
勤務時間を調整する
在宅勤務を利用する
転職する
など、退職以外の方法もあります。
仕事を辞めた後の生活をイメージする
退職すると仕事によるストレスが減る可能性があります。
一方で、
「収入がなくなって治療費が心配」
「家にいる時間が増えて、妊活のことばかり考えてしまう」
「夫からの期待を感じてしまう」
など、別のストレスが生まれる可能性もあります。
「辞めればすべて解決する」と考えるのではなく、辞めた後の生活まで考えてみることが大切です。
転職という選択肢もあります
「今の職場はつらいけれど、仕事そのものは続けたい」
という方もいるでしょう。
その場合は、転職という選択肢があります。
例えば、
残業の少ない職場
通院しやすい勤務体系
有給休暇を取得しやすい職場
フレックスタイムを利用できる職場
在宅勤務が可能な職場
など、自分が妊活と両立しやすい条件を整理してみることができます。
ただし、転職すると新しい職場に慣れるまでの負担もあります。
そのため、
「転職すれば妊娠しやすくなる」
と考えるのではなく、
「妊活と自分の生活を両立しやすい働き方は何か」
という視点で考えることが大切です。
PCOSで仕事を辞めるか悩んだ方の漢方相談事例
ここで、当薬局に実際にご相談いただいたPCOSの方の事例をご紹介します。
※個人が特定されないよう内容を一部調整しています。
自然妊娠後に流産を経験し、仕事のストレスを抱えながら妊活を再開
この方は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)があり、以前に自然妊娠したものの、残念ながら流産を経験されていました。
その後、再び妊娠を目指すことになり、クリニックを受診するとともに、
「今度こそ無事に妊娠したい」
という思いから、漢方相談にも来られました。
当時は、職場に非常に強いストレスを抱えていました。
妊活を続ける中で、
「早く妊娠して、産休・育休に入って仕事を休めたら……」
という思いもありました。
職場で感じるストレスから離れたいという気持ちもあったのだと思います。
「仕事を辞める」という選択肢も考えていた
妊活を続けながら、仕事についても悩まれていました。
実際に転職を考え、求人情報を調べたり、企業説明会に参加したりすることもありました。
しかし、そこで一つの大きな問題がありました。
現在の会社には、福利厚生などの面で良いところもあったのです。
そのため、
「できれば今の会社に残ったまま、早く妊娠したい」
という思いも強くありました。
「今の仕事はつらい。でも、辞めてしまうのも不安」
「できれば今の会社で妊娠して、産休・育休を利用したい」
このように、仕事を辞めたい気持ちと、今の会社に残りたい気持ちの両方がありました。
これは、妊活中の方が抱えやすい非常に現実的な悩みの一つだと思います。
漢方相談では、漢方薬だけでなく「話す時間」も大切にしました
漢方相談では、お身体の状態を伺うだけではありません。
食事、睡眠、生活リズム、仕事の状況、ストレスなどについてもお話を伺いました。
特にこの方の場合、仕事によるストレスが大きかったため、
ストレスを一人で抱え込まないように、毎回たくさんお話をすること
を大切にしました。
PCOSでは、生殖面だけでなく心理的な負担やQOLも重要な課題とされています。国際ガイドラインでも、PCOSの管理では本人の価値観や生活状況を踏まえた個別的な支援が重視されています。
そのため、漢方薬だけを見るのではなく、
「今、この方がどんな生活をしていて、何に困っているのか」
を一緒に整理していくことを大切にしました。
漢方薬を続けながら、人工授精にも取り組みました
漢方薬を服用しながら体調を整えていき、人工授精にも取り組みました。
しかし、なかなか妊娠には至りませんでした。
「体調が整ってきたから、すぐに妊娠できる」
というわけではありません。
妊活では、体調を整えることと妊娠成立との間に、さまざまな要因があります。
この方も、人工授精を続けながら、
「このままでいいのだろうか」
「早く妊娠したい」
という気持ちを抱えていました。
人工授精から体外受精へステップアップ
その後、人工授精から体外受精へステップアップして取り組むことを決心されました。
「できるだけ早く妊娠したい」
という気持ちがあり、体外受精という治療方法を選択することになりました。
そして、体外受精で妊娠が分かりました。
今度は流産せず、無事に出産
その後も漢方薬を続けながら体調管理を行い、最終的には、前回のような流産を経験することなく、無事に出産されました。
もちろん、
「漢方薬を飲んだから妊娠した」
と断定することはできません。
また、この方と同じような経過になることを保証するものでもありません。
この症例で大切なのは、
PCOSの妊活では、妊娠そのものだけでなく、仕事、ストレス、生活、治療、そして本人の気持ちまで含めて考えることがある
ということです。
この症例から考えてほしい「仕事を辞める」ということ
この方は、一時は転職も考えました。
実際に求人を探し、企業説明会にも参加しました。
しかし、最終的には現在の会社の福利厚生なども考え、
「できれば今の会社に残りながら妊娠したい」
という選択をされました。
そして、人工授精から体外受精へ治療をステップアップし、妊娠・出産に至りました。
このことから、
「PCOSで仕事がつらいなら、仕事を辞めるしかない」
とは限らないことが分かります。
転職を考えてもよい。
今の会社に残ってもよい。
勤務方法を変えてもよい。
医療機関に相談して治療方法を見直してもよい。
生活を見直してもよい。
そして、体調について漢方相談を利用する方法もあります。
大切なのは、自分にとって何が一番負担になっているのかを整理することです。
PCOSと妊活では「仕事を辞める・続ける」の二択にしない
妊活中は、どうしても結果を急ぎたくなります。
特に流産を経験した方の場合、
「今度こそ早く妊娠したい」
「また流産したらどうしよう」
という気持ちが強くなることがあります。
そこに仕事のストレスや通院の負担が重なると、
「仕事を辞めて妊活に集中したい」
と思うこともあるでしょう。
しかし、仕事を辞めることだけが解決策とは限りません。
例えば、
選択肢1 今の仕事を続ける
福利厚生や収入、これまで築いてきたキャリアなどを考えて、現在の会社で働き続ける方法です。
選択肢2 働き方を変える
残業を減らしたり、勤務時間を調整したり、通院しやすい働き方を考えます。
選択肢3 転職する
今よりも妊活と両立しやすい職場を探す方法です。
選択肢4 治療方法を見直す
妊活の期間が長くなっている場合は、主治医と治療方針について相談し、タイミング法、人工授精、体外受精など、今後の選択肢を検討することもあります。
選択肢5 体調管理を見直す
食事、睡眠、運動、ストレスなど、自分でできる範囲の生活改善を見直します。
「仕事を辞めれば妊娠できる」ということではありません
ここは非常に大切です。
仕事を辞めることで、
睡眠時間が増える
通院しやすくなる
食事を整えやすくなる
運動する時間が増える
仕事上のストレスが減る
という変化が起こることはあります。
一方で、
収入が減る
治療費への不安が増える
社会とのつながりが減る
妊活のことばかり考えてしまう
など、別の負担が生まれることもあります。
したがって、
「仕事を辞める=PCOSが改善する=妊娠しやすくなる」
と考えることはできません。
むしろ、
「自分の心身にとって、どのような生活が無理なく続けられるのか」
を考えることが大切です。
PCOSの妊活で、仕事と体調の両方に悩んでいる方へ
「仕事が忙しくて体調管理ができない」
「職場のストレスがつらい」
「妊活と仕事を両立できない」
「生理が不規則で、毎月不安になる」
「人工授精を続けているけれど妊娠しない」
「体外受精に進むべきか迷っている」
このように、PCOSの妊活では、単純に「卵巣」だけを見ていても解決できない悩みがあります。
食事、睡眠、運動、仕事、ストレス、通院、治療方針など、いろいろな要素が関係しています。
国際PCOSガイドラインでも、PCOSでは健康的な生活習慣、心理的な健康、QOLなどを含めた包括的な管理が重視されています。
PCOSの体調管理を漢方相談で考える方法もあります
当薬局では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の漢方相談を行っています。
漢方相談では、PCOSという病名だけで漢方薬を決めるのではなく、
月経周期
月経の状態
生理痛
冷え
疲れやすさ
睡眠
食欲
胃腸の状態
むくみ
仕事の状況
ストレス
妊活の状況
などを伺いながら、その時々の体調を確認していきます。
実際の症例でも、PCOSの自覚症状だけでなく、仕事によるストレス、生理痛、頭痛、冷え、睡眠、むくみなどを確認しながら漢方相談を行いました。
また、妊活中の場合は、婦人科・不妊治療専門クリニックなどでの治療を基本としながら、日々の体調管理について漢方相談を活用するという考え方が大切です。
漢方薬を服用すれば妊娠できる、流産を防げる、というものではありません。
治療中の薬や治療内容については、医療機関と漢方相談先の双方に伝えながら進めることをおすすめします。
「仕事を辞めるべきか」一人で決めなくても大丈夫です
PCOSで妊活をしていると、
「仕事を辞めたい」
「でも辞めるのも不安」
「早く妊娠して仕事を休みたい」
「このまま今の会社にいていいのかな」
と、さまざまな気持ちが出てくることがあります。
今回ご紹介した症例でも、転職を考え、実際に企業説明会に参加するところまで進みました。
それでも最終的には、現在の会社の福利厚生なども考え、今の会社に残りながら不妊治療を続けるという選択をされました。
そして、人工授精から体外受精へステップアップし、1回目の体外受精で妊娠され、その後無事に出産されました。
この経過が示しているのは、
「仕事を辞めるか、我慢して続けるか」の二択ではない
ということです。
仕事についても、妊活についても、自分に合った方法を一つずつ探していけばよいのです。
「仕事を辞めたい」と思うほどつらいのであれば、まずは、
何が一番つらいのか
を整理してみてください。
そして、必要であれば婦人科などの医療機関や、心理的なサポートにつながることも大切です。
体調面について相談したい場合には、漢方相談という選択肢もあります。
PCOS・妊活・仕事のストレスを一人で抱え込まないこと。
それが、まず最初の一歩になるかもしれません。
PCOSの漢方相談について
当薬局では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方から、
「生理がなかなか来ない」
「排卵がうまくいかない」
「妊活を続けているけれど体調が整わない」
「仕事と妊活の両立で疲れている」
「流産を経験して、次の妊娠が不安」
など、さまざまなご相談をいただいています。
「仕事を辞めるべきか迷っている」という段階でも構いません。
まずは現在の体調、生活、仕事、妊活についてお話を伺いながら、今の自分にできることを一緒に整理してみませんか?
よくある質問
PCOSなら仕事を辞めたほうが妊娠しやすくなりますか?
仕事を辞めること自体がPCOSの治療になるわけではありません。
仕事によって睡眠不足や生活リズムの乱れ、強いストレスなどが生じている場合は、働き方を見直すことが体調管理につながる場合があります。
仕事のストレスがPCOSの原因なのでしょうか?
PCOSは一つの原因だけで起こる病気ではありません。
仕事のストレスだけを原因としてPCOSになったと考えることはできませんが、仕事によって生活リズムが乱れたり、心身の負担が大きくなったりする場合は、生活全体を見直すことが大切です。
仕事を辞めれば妊活に集中できますか?
時間的には余裕ができる可能性がありますが、必ずしもすべての負担がなくなるとは限りません。
収入、治療費、生活リズム、妊活へのプレッシャーなど、退職後の生活についても考えてみることが大切です。
転職したほうが妊娠しやすくなりますか?
転職そのものが妊娠しやすさを高めるとはいえません。
ただし、現在の職場が通院や睡眠、生活習慣などに大きな負担をかけている場合は、働き方を見直す選択肢の一つになります。
PCOSで妊活中ですが、人工授精から体外受精に進むべきですか?
治療のステップアップについては、年齢、これまでの治療経過、検査結果、卵巣や卵管、精子の状態などを踏まえて、主治医と相談して決めることが大切です。
今回の症例では、人工授精を行った後に体外受精へステップアップし、1回目で妊娠しましたが、これはあくまで一つの事例です。
漢方薬を飲めばPCOSでも妊娠しやすくなりますか?
漢方薬を飲めば必ず妊娠できるというものではありません。
PCOSの妊活では、必要な検査や治療を医療機関で受けることが基本です。
そのうえで、体調や生活習慣などについて漢方相談を利用する方法があります。
流産経験があるPCOSでも漢方相談できますか?
ご相談いただけます。
ただし、流産の原因はさまざまであり、漢方薬によって流産を防げるという意味ではありません。
過去の治療経過や現在の妊活状況、服用中の薬などを確認しながらご相談をお受けします。
仕事のストレスについても漢方相談で話していいですか?
もちろんです。
仕事、睡眠、食事、人間関係、妊活への不安など、日常生活のことも体調を考えるうえで大切な情報です。
今回ご紹介した症例でも、仕事によるストレスについてたくさんお話を伺いながら相談を続けました。
PCOSで生理が来ない場合、仕事のストレスだけが原因ですか?
生理が来ない原因はストレスだけではありません。
PCOSでは排卵が起こりにくくなることで月経が不規則になることがありますが、妊娠、甲状腺機能の異常、高プロラクチン血症など、ほかの原因が関係している場合もあります。
生理が長期間来ない場合は、医療機関にご相談ください。
今の仕事を辞めるか迷っています。漢方相談で相談してもいいですか?
体調や生活についてのご相談はお受けできます。
ただし、「仕事を辞めるべきか」という人生上の判断を漢方相談だけで決めるものではありません。
現在の体調や生活状況を整理しながら、無理なく妊活を続けるために何を変えられるかを一緒に考えていくことが大切です。
※本記事で紹介した症例は一例であり、同様の経過や結果を保証するものではありません。

