
「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されているけれど、なかなか妊娠できない」
「排卵誘発剤を使い、人工授精も3回行ったのに妊娠しない。もしかして着床しにくいのだろうか?」
妊活を続けても妊娠に至らないと、不安になりますよね。
PCOSだからといって、必ずしも着床しにくいわけではありません。 PCOSでは排卵が起こりにくいことが、妊娠しにくさにつながる主な要因の一つです。一方、ホルモン環境やインスリン抵抗性などが子宮内膜の受容性に影響する可能性も研究されていますが、実際の着床率にどの程度影響するのかは、まだ十分に明らかになっていません。
なかなか妊娠しないときは、着床だけに原因を絞らず、排卵の状態やこれまでの治療経過、必要に応じて卵管や精液所見なども確認することが大切です。
この記事では、まず、排卵できていたけどなかなか妊娠にいたらなかった方の事例をご紹介します。医療機関での不妊治療を継続しながら、漢方相談を通じて食事や生活習慣を見直し、最終的に体外受精で妊娠・出産に至ったまでの経過をお伝えします。
あわせて、多嚢胞性卵巣症候群と着床の関係、なかなか妊娠しないときに考えられる原因、PCOSで着床しにくい方の妊活について解説します。
読み終える頃には、今抱えている不安を整理し、主治医と何を確認し、どのような選択肢を検討すればよいのかを考える手がかりが得られるはずです。ぜひ最後までお読みください。
PCOSで人工授精を3回しても妊娠せず、体外受精で出産された症例
当店に漢方相談に来られた、PCOSと診断されていた29歳の女性の事例です。
自然妊娠後に流産を経験し、再び妊活へ
この方は、結婚後に自然妊娠しましたが、流産を経験されました。その後、再び妊活を始め、クリニックでの治療に取り組みましたが、なかなか妊娠には至りませんでした。
治療だけでなく、体調や生活習慣についても見直したいと考え、漢方相談に来られました。
相談では、妊活の経過に加えて、仕事のストレス、冷え、生理痛、頭痛、むくみ、睡眠、食事などについてお話を伺いました。
生活習慣を見直しながら、不妊治療を継続
普段の食事や生活リズムに合わせて、朝食の取り方、睡眠時間の確保、入浴や休息の取り方などを提案しました。また、体調や漢方医学的な見立てを踏まえて漢方薬を選び、経過に応じて見直しました。
その後、クリニックでフェマーラによる排卵誘発を受けながら人工授精を3周期行いましたが、妊娠には至りませんでした。
体外受精へと進んだ結果、初回の体外受精で妊娠され、無事に出産されました。
ただし、この結果を漢方薬や生活習慣の改善だけによるものと断定することはできません。
この症例からお伝えしたいのは、不妊治療を続けながら、日々の体調や生活についても相談し、自分にできることを整理する選択肢があるということです。
PCOSは着床しにくい?研究でわかっていること
2026年に『Gynecological Endocrinology』に掲載された総説では、PCOSの方の子宮内膜受容性について、これまでの研究がまとめられています。
子宮内膜受容性とは、胚を受け入れる子宮内膜の状態に関する概念です。
この総説では、PCOSの方の子宮内膜において、着床に関連する指標の変化が報告されています。その背景として、ホルモン環境の変化、インスリン抵抗性などの代謝異常、慢性的な炎症などが検討されています。
ただし、子宮内膜に関連する指標の変化が、実際の着床率の低下を意味するわけではありません。 PCOSの方が一律に着床しにくいと結論づけるには、さらなる研究が必要です。
そのため、妊娠しにくい場合は、着床だけでなく、排卵の状態やこれまでの治療経過も含めて考えることが大切です。
参考文献:
Chi H, Pan J, Yang Z, Huang H. Endometrial receptivity in polycystic ovary syndrome: altered biomarkers and underlying mechanisms. Gynecological Endocrinology. 2026;42(1):2610550.
https://doi.org/10.1080/09513590.2025.2610550
PCOSでなかなか妊娠しないときに考えたい5つの要因
妊娠の成立には、排卵、受精、胚の発育、着床など、さまざまな段階が関係します。PCOSで妊娠しにくいときも、原因を一つに決めつけず、必要な点を確認することが大切です。
1.排卵や卵胞の発育
PCOSでは排卵が起こりにくくなることがあります。排卵誘発剤を使用している場合は、卵胞の発育や排卵の状況を担当医に確認しましょう。
2.精子の状態
精子の数や運動率など、男性側の要因が妊娠に関係することもあります。必要に応じて、精液検査の結果を確認しましょう。
3.子宮や卵管の状態
子宮内膜ポリープや子宮筋腫、卵管の状態などが妊娠に影響する場合があります。これまでの検査結果を踏まえ、必要な確認事項を担当医と相談してください。
4.ホルモン環境
PCOSでは男性ホルモンの作用が強くなっている場合があります。ただし、ホルモンの特徴は人によって異なるため、検査や診察を通じて確認することが重要です。
5.インスリン抵抗性などの代謝面
PCOSではインスリン抵抗性がみられることがあります。代謝の状態はホルモン環境や排卵機能などに関係する可能性がありますが、すべてのPCOSの方に当てはまるわけではありません。
人工授精を3回行っても妊娠しなかったという結果だけで、着床障害があるとは判断できません。 これまでの治療経過や検査結果を振り返り、担当医と今後の方針を相談しましょう。
PCOSの妊活中、生活習慣や体調も見直すことができます
不妊治療を続けながら、食事、睡眠、運動、ストレスなどを振り返ることもできます。
例えば、次のような点です。
睡眠時間を確保できているか
食事の時間や内容が極端に不規則になっていないか
疲労やストレスが蓄積していないか
無理なく続けられる運動や休息の時間があるか
生活習慣を見直すことは健康管理に役立つ場合がありますが、それだけで妊娠や着床が保証されるわけではありません。不妊治療を遅らせず、ご自身の状況に合わせて取り組むことが大切です。
漢方相談では、何を相談できる?
当店では、PCOSで妊活中の方に対して、妊活の経過だけでなく、睡眠、疲労、冷え、むくみ、胃腸の状態、食事、ストレスなどについてもお話を伺っています。
そのうえで、ご本人の生活環境に合わせて、日々の体調管理や生活習慣の見直し方を検討し、漢方薬の選択についても考えます。
漢方薬を服用すれば着床しやすくなる、必ず妊娠できるということではありません。
また、妊活中に漢方薬を追加する場合は、現在服用している薬との併用や安全性について、担当医や薬剤師に相談してください。
漢方相談は不妊治療の代わりではなく、必要な医療を受けながら、体調管理について考えるための選択肢の一つです。
PCOSで人工授精を繰り返しても妊娠しないときの次の一手
なかなか妊娠しないときは、次の2つを分けて考えると整理しやすくなります。
医療機関で確認すること
排卵誘発剤に対する卵胞の反応や排卵の状況
精液検査や卵管・子宮の検査結果
今後の治療方針や、体外受精へのステップアップの必要性
日々の体調管理で見直せること
食事や睡眠のリズム
疲労やストレスの状態
無理なく続けられる運動や休息
どの検査や治療が必要かは、年齢や治療期間、これまでの検査結果などによって異なります。担当医と相談しながら、今後の方針を考えましょう。
生活や体調について、自分に合った見直し方がわからない場合は、漢方相談で専門家に相談する方法もあります。
多嚢胞性卵巣症候群の着床に関するよくある質問
Q1.PCOSだと着床率が低くなるのでしょうか?
PCOSでは、子宮内膜やホルモン、代謝などが妊娠に関係する可能性が研究されています。しかし、PCOSの方すべてで着床率が低くなるとはいえません。個々の検査結果や治療経過を踏まえて考えることが大切です。
Q2.人工授精を3回しても妊娠しない場合、着床障害ですか?
人工授精を3回行っても妊娠しなかったという結果だけでは、着床障害とは判断できません。これまでの治療経過を担当医と振り返り、今後の治療方針を相談しましょう。
Q3.PCOSの妊活中に漢方薬を服用してもよいですか?
体調や服用中の薬、不妊治療の内容などを確認したうえで検討する必要があります。担当医や薬剤師に相談し、妊娠が判明した場合も服用を続けてよいか確認してください。
Q4.漢方相談を受ければ妊娠しやすくなりますか?
漢方相談では、体調や生活習慣を確認し、漢方医学の観点から体調管理の方法を考えます。ただし、漢方薬によって妊娠率が高まることや、着床しやすくなることを保証するものではありません。
PCOSでなかなか妊娠しない方へ|漢方相談という選択肢
PCOSで妊活を続けても妊娠しないと、「自分は着床しにくい体なのでは」と不安になることがあると思います。
しかし、妊娠に至らない理由は一つとは限りません。まずは医療機関で治療経過を振り返り、必要な検査や今後の方針を確認することが大切です。
そのうえで、食事や睡眠、冷え、疲労、ストレスなど、日々の体調についても相談したい方には、漢方相談という選択肢があります。
当店では、PCOSの妊活について、現在の治療内容や服用中のお薬を確認しながら、生活習慣や体調管理についてご提案しています。
不妊治療を続けながら、生活面でできることを整理したい
自分に合った食事や生活習慣について相談したい
PCOSに加えて、冷えや疲れなどの体調についても相談したい
このような方は、一度ご相談ください。
必要な医療を受けながら、自分にできることを一つずつ整理し、納得できる妊活の進め方を考えていきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。妊娠を希望している方は、婦人科・生殖医療専門医にご相談ください。漢方薬の使用についても、医師・薬剤師にご確認ください。

