多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は着床しにくい?妊娠しにくい理由と妊活で考えたいこと

「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は着床しにくいのでしょうか?」

「排卵はできるようになったのに、なかなか妊娠しません」

「PCOSだと体外受精をしても着床しにくいのでしょうか?」

PCOSと診断されて妊活をしている方から、このようなご相談をいただくことがあります。

PCOSは、排卵が起こりにくくなったり、生理周期が乱れたりすることがあるため、妊娠を希望する方にとって気になる疾患の一つです。

一方で、最近では、PCOSの妊娠しにくさについて「排卵」だけではなく、子宮内膜の受容性(受精卵を受け入れやすい状態)についても研究されています。

ただし、「PCOSだから必ず着床しにくい」というわけではありません。

PCOSの方でも自然妊娠や不妊治療によって妊娠される方はいます。

大切なのは、「PCOSだから着床しにくい」と決めつけるのではなく、自分の場合に妊娠を妨げている可能性があるものを一つずつ整理していくことです。

この記事では、

  • PCOSは本当に着床しにくいのか

  • PCOSで妊娠しにくくなる主な理由

  • 排卵と着床の関係

  • PCOSと子宮内膜の関係

  • 妊活中に確認しておきたいこと

  • PCOSで妊娠された実際の漢方相談事例

について、薬剤師の立場から分かりやすく解説します。

 

PCOSは本当に着床しにくいの?

結論からいうと、PCOSでは、排卵だけでなく、受精卵を受け入れる子宮内膜の状態にも影響があるのではないかと研究されています。

子宮内膜は、受精卵が子宮に到達したときに受け入れるための重要な場所です。

排卵が起こり、受精卵ができたとしても、子宮内膜が受精卵を受け入れやすい状態になっている必要があります。

PCOSでは、

  • ホルモンバランスの変化

  • アンドロゲンの影響

  • インスリン抵抗性などの代謝異常

  • 慢性的な炎症

  • 子宮内膜におけるホルモンへの反応

などが、子宮内膜の状態に関係する可能性が研究されています。

そのため、PCOSの妊娠しにくさを考えるときには、排卵だけでなく子宮内膜にも目を向ける必要があると考えられています。

ただし、ここで注意したいのは、「PCOSの女性は必ず着床しにくい」という意味ではないということです。

PCOSと子宮内膜の受容性との関係については研究が進んでいますが、2024年のレビューでは、PCOSの子宮内膜受容性を改善するための特定の治療について、十分なエビデンスはまだ確立していないとされています。

したがって、「PCOSだから着床しない」と考えてしまうのではなく、妊娠までの過程を全体として考えることが大切です。

 

PCOSで妊娠しにくい主な理由は「着床」だけではありません

PCOSの方が妊娠しにくい場合、まず考えられるのが排卵障害です。

PCOSでは、卵胞が育っても排卵まで進みにくかったり、排卵までに時間がかかったりすることがあります。

そのため、

  • 生理は来ているけれど排卵していない

  • 排卵するまでに時間がかかる

  • 生理周期が長い

  • 排卵日を予測しにくい

といったことがあります。

つまり、

排卵がうまく起こらない
  ↓
卵子と精子が出会う機会が減る
  ↓
妊娠しにくくなる

ということが、PCOSによる妊娠しにくさの大きな要因になります。

PCOSの診断や検査について詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてください。

 

PCOSでは「排卵できれば妊娠できる」とは限りません

PCOSの妊活では、「排卵さえできれば妊娠できる」と考えてしまうことがあります。

しかし、妊娠には複数の過程があります。

  1. 卵胞が育つ

  2. 排卵する

  3. 卵子と精子が出会う

  4. 受精する

  5. 受精卵が発育する

  6. 子宮内膜が受精卵を受け入れやすい状態になる

  7. 着床する

  8. 妊娠が継続する

このため、「排卵できた=必ず妊娠する」ではありません。

排卵が起こるようになった後も妊娠しない場合には、PCOSだけでなく、卵管の状態、精子の状態、子宮の状態、年齢など、さまざまな要因を考える必要があります。

 

PCOSと子宮内膜にはどのような関係がある?

子宮内膜が受精卵を受け入れやすい状態になることを、子宮内膜の受容性といいます。

近年、PCOSと子宮内膜の受容性についても研究が進められています。

PCOSでは、ホルモンや代謝の変化などが子宮内膜に影響し、受精卵を受け入れる環境に関係する可能性が指摘されています。

研究では、

  • インスリン抵抗性

  • 高アンドロゲン状態

  • ホルモンへの反応の変化

  • 炎症など

さまざまな要素が関係する可能性が検討されています。

ただし、PCOSの方すべてに子宮内膜の問題があるわけではありません。

また、「これをすればPCOSの着床率が上がる」という方法が確立されているわけでもありません。

そのため、妊活中は「着床だけ」を過度に気にするよりも、現在の治療状況や体調を含めて総合的に考えることが大切です。

 

「排卵できたのに妊娠しない」ときに考えたいこと

PCOSの方から、「排卵誘発剤を使って排卵するようになったのに妊娠しません」というご相談をいただくことがあります。

このような場合、「排卵しているのに妊娠しない=着床できていない」と判断することはできません。

妊娠には、排卵だけでなく、

  • 卵子の状態

  • 精子の状態

  • 受精

  • 胚の発育

  • 子宮や卵管の状態

  • 子宮内膜の状態

など、多くの要素が関係します。

そのため、妊娠しない原因を「着床だけ」に絞って考えないことが大切です。

 

PCOSの妊活では「自分の体の状態」を整理することも大切

PCOSと診断されると、「卵巣に問題があるから妊娠しにくいのかな」と考えてしまうかもしれません。

しかし、PCOSではホルモンだけでなく、代謝や生活習慣なども関係しています。

妊活中には、

  • 生理周期

  • 排卵の状態

  • 生理痛

  • PMS

  • 冷え

  • むくみ

  • 睡眠

  • ストレス

  • 食欲

  • 胃腸の状態

  • 体重の変化

  • 現在受けている不妊治療

  • 服用している薬

などを整理してみることも大切です。PCOSは同じ診断名でも、一人ひとり症状や体調が異なります。

そのため、その時のお身体の状態を確認することが重要です。

PCOSで「着床しにくいのでは?」と悩んでいた29歳女性の症例

ここで、当薬局で実際にご相談いただいた29歳女性の症例をご紹介します。

この方は、過去に自然妊娠したものの流産を経験されていました。

その後、PCOSと診断され、再び妊活を開始。

「何とか妊娠したい」という思いから、クリニックで不妊治療を受けながら、漢方相談にも来られました。

相談開始時の状態

29歳、名古屋近郊にお住まいの女性でした。

相談開始時の生理周期は28~35日。

PCOS以外にも、

  • 生理痛

  • 冷え

  • 肩こり

  • 頭痛

  • 夕方からのむくみ

  • 仕事によるストレス

  • イライラ

  • のどの渇き

などがありました。

一方、PCOSそのものの自覚症状はそれほど強くありませんでした。

 

PCOSだけでなく、その時のお身体の状態を確認

この方の場合、PCOSという病名だけを見るのではなく、現在のお身体の状態を確認しながら漢方相談を行いました。

特に仕事によるストレスがあり、冷えや生理痛、頭痛などもみられていました。

そこで、体質やその時々の状態を確認しながら漢方薬を選択し、2週間に1回程度のペースで相談を続けました。

また、

  • 朝食をしっかり摂る

  • 休息する時間を確保する

  • 睡眠時間を十分に確保する

  • シャワーだけで済ませず湯船につかる

など、生活面についてもアドバイスしました。

 

1か月半ほどで生理痛や頭痛に変化

相談開始から1か月半ほどすると、

  • 生理痛が改善

  • 頭痛が改善

  • 経血の塊がなくなった

という変化がみられました。その後も状態を確認しながら漢方相談を継続しました。

 

人工授精を3周期行った後、体外受精へ

3か月後には良い状態が続いており、フェマーラによる排卵誘発を行いながら人工授精を3周期行いました。しかし、人工授精では妊娠には至りませんでした。そこで体外受精へステップアップ。

相談開始から8か月後、フェマーラによる排卵誘発を行いながら体外受精を実施し、妊娠が確認されました。

この方は、初めての体外受精で妊娠されました。この症例から分かる大切な点は、PCOSだから着床しない、という単純な話ではないということです。

この方も、漢方相談だけを行っていたわけではありません。

クリニックでの不妊治療と漢方相談を併用し、人工授精から体外受精へと治療を進めています。

漢方相談では、その間のお身体の状態を確認しながら、その時々に合わせて対応しました。

※これは一例であり、同じ方法で同じ結果が得られることを保証するものではありません。

 

PCOSで着床しにくいと感じたときに確認したいこと

「PCOSで着床しにくいのでは?」と悩んでいる場合、まずは次のようなことを整理することをおすすめいたします。

① 排卵はきちんと起こっているか

PCOSでは排卵障害が起こりやすいため、まず排卵状況を確認することが重要です。

② 生理周期はどのくらいか

生理周期が長い場合には、排卵まで時間がかかっている可能性があります。

「PCOSで生理が来ない」という方は、こちらの記事も参考にしてください。

③ 不妊治療はどこまで進んでいるか

タイミング法、排卵誘発、人工授精、体外受精など、現在どの段階にいるのかを整理することも大切です。

④ 体調に気になる変化はないか

生理痛、冷え、むくみ、PMS、睡眠、ストレス、胃腸の状態など、自分自身の体調を振り返ってみましょう。

 

PCOSの妊活で漢方相談を利用するという選択肢

PCOSの妊活では、クリニックでの不妊治療が中心になることが多いと思います。

そのうえで、

「自分の体調も整えていきたい」

「不妊治療を続けながら漢方相談もしてみたい」

という方もいらっしゃいます。

当薬局では、PCOSという病名だけで漢方薬を決めるのではなく、

  • 生理周期

  • 生理痛

  • PMS

  • 冷え

  • むくみ

  • 睡眠

  • ストレス

  • 食欲

  • 胃腸の状態

  • 服用中の薬

  • 現在受けている不妊治療

などを確認し、その時のお身体の状態を考えながら漢方相談を行っています。

PCOSの漢方相談について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

なお、漢方相談を利用する場合も、現在受けている不妊治療を自己判断で中止する必要はありません。

今回ご紹介した29歳女性の症例のように、不妊治療と漢方相談を併用するという選択肢もあります。

 

こんな方はPCOSの漢方相談をご検討ください

  • PCOSと診断されて妊活をしている

  • 排卵誘発剤を使っている

  • 排卵するようになったのに妊娠しない

  • 人工授精を何度か行っている

  • 体外受精に進むことになった

  • 過去に流産を経験した

  • PCOSと着床の関係が気になっている

  • 妊娠に向けて体調を整えたい

  • 不妊治療と漢方相談を併用したい

  • PCOSの妊活について相談できる薬局を探している

このようなお悩みがある方は、現在の治療状況とお身体の状態を一度整理してみることをおすすめします。

 

まとめ|PCOSだから着床しにくいと決めつけないことが大切

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では、排卵障害が妊娠しにくさの大きな原因になります。

一方で、近年はPCOSと子宮内膜の受容性、つまり受精卵を受け入れやすい状態との関係についても研究されています。

ただし、

「PCOSだから着床しにくい」
「PCOSだから妊娠できない」

と一律に考えることはできません。

妊娠には、排卵、受精、胚の発育、子宮内膜など、さまざまな要素が関係します。

だからこそ、「PCOSだから着床しにくいのでは?」と不安になるだけでなく、自分の場合は何が妊娠へのハードルになっている可能性があるのかを整理することが大切です。

今回ご紹介した29歳女性も、PCOSと過去の流産経験がありながら、クリニックでの不妊治療と漢方相談を併用し、人工授精を経て体外受精へ進み、1回目の体外受精で妊娠されました。

※本症例は一例であり、同様の経過や結果を保証するものではありません。

PCOSの妊活について、「排卵はしているのになかなか妊娠しない」「不妊治療を続けながら体調も整えたい」などのお悩みがありましたら、現在の状態を一緒に整理することから始めてみてはいかがでしょうか。

 

よくある質問(FAQ)

Q. PCOSは着床しにくいのでしょうか?

PCOSでは、子宮内膜の受容性が妊娠成立に関係する可能性について研究されています。ただし、PCOSの方すべてが着床しにくいというわけではありません。

PCOSでは排卵障害が妊娠しにくさの大きな要因となるため、着床だけに原因を求めないことが大切です。

Q. PCOSで排卵できれば妊娠できますか?

排卵は妊娠のために重要ですが、排卵できれば必ず妊娠するわけではありません。

受精、胚の発育、子宮内膜の状態など、複数の過程が妊娠成立に関係します。

Q. PCOSで人工授精を何回しても妊娠しません。着床しにくいのでしょうか?

人工授精で妊娠しない理由が、着床だけとは限りません。

排卵の状態、卵管、精子の状態、年齢、子宮の状態など、さまざまな要因が関係する可能性があります。

治療回数や今後の治療方針については、担当医と相談することが大切です。

Q. PCOSで体外受精をすると着床しやすくなりますか?

体外受精では、受精から胚移植までを医療的に行いますが、PCOSだから体外受精をすれば必ず着床するというわけではありません。

体外受精へ進むタイミングや治療方法については、生殖医療を担当する医師と相談してください。

Q. PCOSの妊活で漢方薬を使うことはできますか?

不妊治療と漢方相談を併用することはあります。

ただし、漢方薬が着床率や妊娠率を高めることが確立しているわけではありません。

服用中の薬や不妊治療の内容なども確認しながら、専門家に相談することが大切です。

Q. PCOSで過去に流産した場合、次の妊娠も難しいのでしょうか?

流産の経験があるからといって、次の妊娠が必ず難しくなるわけではありません。

流産にはさまざまな原因があり、PCOSだけを原因と考えることはできません。

不安がある場合は、妊活を再開する前に医療機関で相談してみましょう。

Q. PCOSで生理が来ない場合も妊娠できますか?

PCOSでは排卵が起こりにくく、生理周期が長くなったり、生理が来なくなったりすることがあります。

妊娠を希望している場合は、排卵状況を確認しながら治療を進めることが大切です。

生理が長期間来ていない場合は、自己判断で様子を見続けず、医療機関に相談しましょう。

Q. PCOSの妊活では、どんなことを漢方相談で相談できますか?

生理周期や生理痛、冷え、むくみ、PMS、睡眠、ストレス、胃腸の状態など、妊活中の体調について相談できます。

当薬局では、PCOSという病名だけで漢方薬を決めるのではなく、その時々のお身体の状態を確認しながら相談を行っています。

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